第149話 元祖

 私をバンドに引き摺り込もうとするペンギン達に待ったを掛けたのは司書だった。


 やめなさい。


 流石、実質ゴコクの長的な立場にある司書の言葉にペンギン達は動きを止める。


 彼女は祝勝会で美味しい料理を作ると言う大事な役目があるのでございます!

 歌ってる暇など無いのです!


 ……この微妙な気持ちはなんだろうか。

 その後に付け足したように私が嫌がってることを言われてもこの微妙な気持ちは晴れない。


 料理と言われてキングペンギンとアデリーペンギンが首を傾げる。

 そう言えばこの二人は料理を食べたことが無かったか。

 なので、料理が食べれなくなる可能性に気が付いてハッとしたような表情を浮かべるセグロジャッカルやクーちゃんと違い、キングペンギンやアデリーペンギンには有効なカードにはなり得ないだろう。


 だが、頭の良い司書はお昼弁当として持ってきたサンドイッチをキングペンギンとアデリーペンギンの口に捩じ込んだ。


 新体験!


 どうやらキングペンギンとアデリーペンギンはサンドイッチが気に入ったようだ。

 物欲しそうに見てるケープペンギンにも一つ配り、改めて話し合いを始める。


 そもそも、どうして私をボーカルにしようと思ったのか?


 前に歌った事も理由の一つなのだが、何より私が非常にペンギンっぽいからだそうだ。

 ……今まで散々ゴリラに似ていると言われたが、ペンギンっぽいと言われたのは初めてだ。


 どこら辺がペンギンなのだろうか?


 キングペンギン曰く……


 直立して二足歩行!

 どう見てもペンギンじゃあないか!


 とのこと……

 ペンギンの基準が少々おかしくはないだろうか?

 その基準ならばフレンズ全てに当て填まりそうなものだが、ケモノの状態でその条件でなければならないようだ。


 その時、司書がメンバーの条件がペンギンで良いならぴったりのフレンズがいると言う。

 日夜フレンズ達の相手をしている司書の事だから、ここには居ないペンギンの仲間を知っているのだろう。

 そう思った矢先に何故かオオウミガラスの手を掴んでキングペンギン達の前に突き出した。


 オオウミガラスもキングペンギン達も何故連れて来られたか分からないようで、頭上に疑問符を浮かべながら司書の顔を見る。


 元祖ペンギンであるオオウミガラスなら問題はございませんよね。


 ……無言の間。


 アデリーペンギンがなるほどと相槌を打ったことで時は再び流れ出す。


 オオウミガラスは驚愕の絶叫を上げて、キングペンギンとアデリーペンギンがそう言えばそうだったとばかりにオオウミガラスを捕獲した。

 どうやら本当にオオウミガラスには元祖ペンギンなる称号があるようだ。


 助けを求めて私の方を見るオオウミガラス。


 私は親指を上げてオオウミガラスに言い放つ。


 何事も挑戦だ。

 私もオオウミガラスの歌は是非とも聞いてみたい。


 私が助けてくれないと悟ってオオウミガラスは何もかもを諦めたような表情でキングペンギン達に引き摺られて行く。


 偶にはオオウミガラスが巻き込まれる立場になってくれ。


 私は必死に歌うオオウミガラスを生暖かい目で見守るのだった。

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