第145話 痼
手柄に免じてシーサー達からハムハムする権利を貰ったハブは早速とばかりにライトの脇腹にかぶり付く。
何でそこ!?
おそらく、ハブの好みだろう。
私とクーちゃんは比較的長い時間ハムハムされて、オオウミガラスはほぼ一瞬だった。
そして、私とクーちゃんの噛まれた部分の共通点は肌が露出していることだ。
オオウミガラスも太ももは肌部分ではあったが、歩けなくなるから足はやめてくれと言った結果腕となった。
そして、肌面積が広いシーサー達が狙われるのはある意味必然だったのかもしれない。
ハブがハムハムしたい場所がたくさんあるのだから……
その後、シーサー達に別れを告げて私達はゴコクエリアに向けて出発した。
笑顔で手を振って見送っているシーサー達の姿が段々と小さくなる。
自立稼働兵器に潜んでいた超巨大セルリアンの断片も倒したことだし、本当の意味で異変は終わった事だろう。
もし、全てが終わったらリウキウエリアを観光するのも悪くないだろう。
いや、むしろ今少しだけ観光しても良かったかもしれない。
私は名残惜しむようにリウキウエリアの方を向くと、浜辺に赤い点と青い点がまだ並んでいるのが見えた。
いつまで見送る気なのやら。
私は少しだけ呆れながらも最後にシーサー達の姿をもう一度見るために双眼鏡を覗く。
そこには相変わらず笑顔で手を振るシーサー達の姿が見えた。
私の予想ではその筈だった。
だが、シーサー達の姿は私の思い描いた様子とは別の様子を見せていた。
シーサー達は先程までの笑顔とは変わって、険しい表情でこちらを見ていた。
どうして……
そう思っていると突然視界いっぱいに薄茶色の瞳が映り込む。
思わず驚いて双眼鏡を落としてしまう。
どうやらクーちゃんが私の双眼鏡を逆から覗き込んでいたらしい。
クーちゃんか……驚かせないでくれ……
心臓に悪い。
私は再び双眼鏡を覗くとシーサー達は談笑をしながら浜辺を歩いて行くところだった。
……先程のは見間違いだったのだろうか?
胸の内に少しだけ不安の種を抱えながら私はゴコクエリアに帰って来た。
無意識に少しだけ浮かない表情を浮かべていたようで、オオウミガラスに心配されてしまった。
さすがにあまり心配を掛けられない。
彼女達フレンズには極力笑顔でいてもらいたいのだ。
やるせない世界だけど、彼女達の純粋な笑顔を見ているとまた明日もまた頑張ろうと言う気になってくる。
さて、これから夕食の準備を始めよう。
今日はシロナガスクジラも含めて4人で食事だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます