第144話 外界の驚異

 まさか、まだ動くとは……


 驚愕の思いで弱々しく動く自立稼働兵器を見詰める。

 自立稼働兵器に搭載されているカメラが私を捉えて……

 私の見ている前で内側から塗り潰されるようにセルリアンの目へと変化した。


 全員退避!!


 その光景を目にした瞬間に私の口から出たのは退避の号令。

 頭で物事を考える以前に本能的な部分で危険を感じた。


 咄嗟に飛び退くが勢い良く振られた自立稼働兵器の足の爪が私の服を引き裂く。


 セツナちゃん!!


 オオウミガラスから悲鳴のような叫びがあがる。


 問題ない、服が破けただけだ。


 自立稼働兵器は暴れるように残った一本だけの足を振り回す。

 そして、ピタリと不自然に止まったと思った直後に痙攣のような震えを起こして、千切れた足の断面から漆黒の足が生えてきた。


 ……本当にしぶとい奴だ。


 あの黒い足は間違いなく超巨大セルリアンの物。

 あれは超巨大セルリアンの断片の生き残りだ。


 セルリアンに怯えて私の後ろに隠れようとするクーちゃんに対して、この場で3名ほどセルリアンに向かって駆けて行く。

 シーサー達とシロナガスクジラだ。


 シロナガスクジラは逞しい尾びれでセルリアンを叩き付ける。

 だが、セルリアンの纏う自立稼働兵器の装甲が固く、表面が僅かにひしゃげるだけでセルリアン自身には対してのダメージはない。


 確か、あの装甲はロケットランチャーを真正面から受けても数発は耐えられる装甲だった筈なのだが、それを歪めるとは……


 固い部分を攻撃したシロナガスクジラと対照的にシーサー達は新しく生えてきた足を狙った。

 おそらく、装甲よりも柔らかいと判断しての事だろう。

 シーサー達の判断通りセルリアンとしての足は脆く、簡単に切断することが出来た。


 だが、切断された足は直ぐ様再生してしまう。


 あまり、有効ではないようだ。


 本来の自立稼働兵器ならば脆い間接部を攻撃して対象を無力化するのだが、今回は自立稼働兵器内部に侵入したセルリアンを倒さなければならない。

 内部に有効的なダメージを与えられれば……


 攻めあぐねていると森から声をあげながら、一人のフレンズが飛び出してきた。


 オマエはガブガブだー!!


 ハブだ。

 私でも対処できるくらいのハブがセルリアンに向かったところで、不用意な犠牲を生むだけだ。


 私はハブに危ないから逃げろと言うが、私の制止の声を無視してハブはセルリアンに駆け寄り、シーサー達の攻撃によって再生中の足に思いっきりかぶり付く。


 だが、直ぐに振りほどかれて私の方へ弾き飛ばされてしまう。


 弱いのになんて無茶な事をしたんだ!


 だが、数秒後にその言葉を撤回することになる。


 セルリアンの噛まれた部位が不自然に膨張し、噛み跡から零れ落ちるようにサンドスターが吹き出す。

 そして、セルリアンの動きが止まると全ての足がぱっかーんと弾け飛び、サンドスターへと還って沈黙した。


 なるほど、内部に有効的なダメージを与えるには毒か。


 どうやら今回はハブのお手柄のようだ。

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