第143話 時の流れ
私はジャパリパークの現状をなるべく簡潔に伝えた。
例の異変は解決したが、人は戻って来なかった事。
人の居なくなったジャパリパークでもフレンズ達はそれなりに元気にやっていけてる事。
大半のフレンズはここにいるオオウミガラス達のような例の異変後に生まれた世代なので、人が運営していた頃のジャパリパークを知ってるフレンズは非常に少ない。
かつてのジャパリパークが無くなってしまった事に酷く落胆していたシーサー達だが、フレンズ達が今もこうして元気に暮らしてる事が多少の救いになったのか、すぐに気持ちを切り替えて立ち直った。
だが、シーサー達はオオウミガラスが言った超巨大セルリアンと女王についても気になったようで、それに対する質問をしてくる。
ジャパリパークのゴコクエリアで起きた二つの異変。
幸いにもフレンズ達に犠牲が出ることなく幕を閉じたが、シーサー達は二つの異変に思うことがあるようで難しい顔をして考え込んでいた。
……それは本当に女王だったのかな?
シーサー達に寄れば女王はフレンズ一人でどうにかなるような存在ではないと言う。
しかし、オオウミガラスが戦った時の女王の口振りではまだ不完全だったので、以前より弱かったのではないだろうか。
そう言うとシーサー達はそうかもしれないと言い、難しい顔をしたまま黙ってしまった。
まだ、腑に落ちていないようだ。
まぁ、良いか。
良いのか……
途中で思考放棄したシーサー達はぐっと身体を伸ばしてから、キミの行きたいところへ案内してあげると言う。
……先程の浜辺に戻ろうか。
浜辺に戻った私は早速自立稼働兵器の残骸の調査を行う。
シーサー達が自立稼働兵器の残骸を見てロボゲーの雑魚敵みたいなこれは何なのかと聞いてきた。
どうやら、シーサー達はこれが何なのか知らないようだ。
だが、ゲームを知ってるならこれの正体もすんなり受け入れられるだろう。
これは戦車だ。
私の真剣な表情にシーサー達はひきつった表情を浮かべる。
祖父母の世代が自立稼働兵器を見る度に、こんな物はゲームの中だけの物だと思っていたと良く口にしていたのを思い出す。
そして、自立稼働兵器を調べている内に私はとある物を発見した。
自立稼働兵器の千切れた足の断面に付着した黒色の鉱石、硬質化した超巨大セルリアンの一部だ。
おそらく、接触した痕跡だろう。
超巨大セルリアンのあの形状は自立稼働兵器に影響された物だったのかもしれない。
セルリアンに対して造詣の深いシーサー達が言うには、それは固形化したセルリウムらしい。
知らない単語が出てきたが、文字通りセルリアンを形作る物質のようだ。
このセルリウムは溶岩の性質を色濃く反映した物のようで、水に触れたことにより固形となった。
こうなってしまえば、後は風や波の浸食で徐々にサンドスターへ還っていく。
火山の噴火口にでも投げ込めば復活するかもしれないが、危険性はほぼないと見て良いだろう。
さて、調査も終わった事だし帰るとしよう。
ギギ……
私が離れようとした瞬間に自立稼働兵器から金属が擦れ合う音が聞こえた。
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