第142話 今と言う現実

 私はシーサー達に引き摺られるように連れて行かれながら、先程のシーサー達の言葉を思い出す。


 守護けもの

 確かに彼女達は自身の事をそう言った。


 コイちゃんに寄れば守護けものは皆例の異変で居なくなってしまったと言う話だった筈だ。


 なら、私の両脇を掴んでいる彼女達は本当に守護けものなのだろうか?


 私は意を決して質問をする。

 貴女達は本当に守護けものなのかと……


 その問いに対してシーサー達は当たり前のように普通に肯定した。


 本人曰く、所謂仮死状態で長い間眠っていたが、突然目覚めたらしい。


 守護けものは不死身なのか……?


 だが、起きて辺りを見回すとシーサーの居た神社は荒れ放題で酷い具合だったらしく、午前中は必死に掃除をしていたようだ。

 その後、気晴らしに散歩に出掛けて浜辺に来たところで私達と出逢ったと……


 ここまで聞いた時に道の脇にある茂みがガサリと音を立てる。

 軽い既視感を覚えた矢先に茂みの中からハブが現れてシーサー達にハムハムさせろと襲い掛かる。


 だが、さすが守護けものと言うべきか。

 シーサー・ライトを名乗る青色のシーサーがハブの腕を掴むとぐるぐる回して空の彼方へ放り捨ててしまった。


 果たしてハブは大丈夫なのだろうか?


 大丈夫だそうだ。

 フレンズ達の身体は頑丈だからあの程度問題ないと言う。


 それでもかなり痛いと思うよ……


 オオウミガラスはハブの飛んで行った方を見詰めながらぼそりと呟いた。


 その後、シーサー達はハブの行動について、ハブの担当飼育員は何やってるんだろうと文句を言いながら、私達を連れてとある場所へやってきた。


 まずはリウキウの文化を楽しもうって事でリウキウ村で……


 シーサー達の笑顔が凍り付く。


 目の前にあったのはいくつかの木造の家が崩れ落ちて、南国の植物に半ば侵食された廃村だ。


 シーサー達は取り繕うようにリウキウの遺跡を探検して、古代のリウキウ文化を探ろうとか言ってる。

 しかし、かなり動揺しているようで、視線があちこちうろうろしていて定まっていない。


 もしや……

 シーサー達は過去のジャパリパークを知っているが、ジャパリパークの現状を把握していないのだろうか?


 私が声を掛けようとするとまだ他にも見所はあるからとまた引っ張って行こうとしたので無理矢理振りほどいた。


 はぁ……


 私は思わず溜め息を吐く。

 あまり、残酷な事は言いたくないのだが、ここははっきりと告げた方が良い。

 私はシーサー達を真っ直ぐ見詰めて言葉を紡いだ。


 察しているとは思うが、ジャパリパークはもう……崩壊している。


 そう言うと真っ先に反応したのが後ろにいるオオウミガラス。

 超巨大セルリアンも女王もやっつけたよ!?と叫び、クーちゃんがオオウミガラスの隣でオオウミガラスと同じポーズで驚きを表していた。


 ……済まない。

 話がややこしくなるから少しだけ静かにしてくれ。

 私が言ってるのは昔のジャパリパークの事だ。

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