第140話 リゾート
白い砂浜にエメラルドグリーンの海。
外の世界では残っているかも怪しい程のただひたすらに綺麗なビーチが広がっている。
ここがリウキウエリア。
ジャパリパークの中でもリゾート施設を兼ねる南国のエリアだ。
ここへは観光に来たんじゃない。
そう自分に言い聞かせながら船を降りたが、波が私の足首を抜ける感覚に直ぐ様水遊びに興じたい気分になる。
もうピクリとも動かなくなったクーちゃんを船から下ろして浜辺に運び、ヤシの木の下に寝かせる。
しばらくすれば復活するだろう。
さて、クーちゃんの体調を考慮して予定よりも離れたところで陸に上がったので、ここからは徒歩で目的地へ向かうことになる。
目標物はここから見えるだろうか?
だが、私の首は白い砂浜の向こう側ではなく、陸地に向かって動いた。
微かに茂みが動いたような音がしたのだが……
どうやら私の聴力も捨てたものじゃないらしい。
案の定と言うべきか茂みの中から野生のフレンズが飛び出してきた。
ハムハムさせろー!!!
野生のフレンズが襲い掛かってきた!!
私は咄嗟に両手を突き出して肩を掴んで押さえて何とか噛み付かれる事を防いだ。
まさか、人を襲ってくるフレンズが居るとは……!!
いや、フレンズを襲うフレンズと言った方が良いだろうか?
しかし、防いだは良いもののフレンズの方が力は強いので、そのうち押し負けてしまうだろう。
私は助けを求めるようにシロナガスクジラの方を見てみると苦笑いを浮かべながらこう答えた。
彼女なりの歓迎ですから……
それにまた噛み付かれるのはちょっと……
小声で言ったのだろうが私の耳にはしっかりと後半部分も聞こえた。
オオウミガラスの方は歓迎と聞いて私を助けるべきかどうか迷っている。
クーちゃんはくたばっている。
薄情者め!!
私は小さく丸くなるように後方へ倒れ、蹴りと相手の力を利用して後方にある海へと投げ飛ばした。
ザパンと水飛沫があがり、オオウミガラスとシロナガスクジラから歓声が上がる。
投げ飛ばされたフレンズはなおも私をハムハムすることに執着しているようで、起き上がって再び私目掛けて突撃してきた。
相手は人よりも身体能力の高いフレンズだ。
だが、その身体構造は限り無く人に近い。
ならば……!!
私は咄嗟に相手の腕を掴んで捻り上げながら背後に回り、関節技を決めた状態で足を掛けて相手を砂の上に押し倒す。
念入りに抵抗されないように尻尾もしっかりと足で押さえる。
これで身動きを封じた。
先っちょだけとか一ハムだけでもとか言ってる粗暴なフレンズにしっかりと言い聞かせるように言葉を掛ける。
フレンズが遊びのつもりでもこちらは大怪我をしてしまうかもしれない。
人はとてもか弱い獣だから……
そう言うとオオウミガラスがまるで抗議をするかのように呟いた。
セツナちゃん……わたしの知ってるか弱いは相手を投げ飛ばしたり、押し倒して身動きを封じたりしないよ……
……それでも、私は自身がか弱いと信じている。
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