第136話 紙に描いて
一通り話して暇を持て余した私はソファーに座っているクーちゃんとオオウミガラスを見ながら紙に絵を描く。
二人の姿を描きながら思ったのは、クーちゃんとの会話は姿を見ないで聞いていると中々狂気的に感じると言うことだ。
何故なら、クーちゃんは喋れないから常に身振り手振りで受け答えをしているので、声はオオウミガラスだけのものになる。
声だけ聞けば延々と独り言を繰り返す怖いフレンズに早変わりだ。
さて、そんな気付きたくもない事実に気が付いた私は黙々と手を動かして絵を完成させる。
芸術を解せない身ではあるが、模写だけならそれなりに心得がある。
描いた絵を見せたところオオウミガラスとクーちゃんの反応も上々だった。
どうやら私の腕前でもジャパリまんを稼げるレベルらしい。
オオウミガラスは私の絵を見て何かを思い付いたらしく、私からペンを受け取って紙に絵を描いていく。
10分後、オオウミガラスは自分で描いた絵を私とクーちゃんに見せてきた。
ケモノだった頃のわたし!
そこに描かれていたのはペンギンにそっくりな姿をした翼の小さな鳥。
ペンギンとの大きな違いと言えば、翼の形だろうか。
ペンギンは真っ直ぐな翼なのに対して、動物のオオウミガラスはくの時に曲がった翼をしている。
ちょうど、フレンズのオオウミガラスの頭に付いている翼と同じ形だ。
私のペンギンに似ていると言う感想に対して、オオウミガラスがペンギンに似ているのではなく、ペンギンがオオウミガラスに似ているのだとオオウミガラスに言われた。
私としてはどちらでも良いのだが、オオウミガラスが強く主張しているのでそう言うことにしておこう。
さて、オオウミガラスが以前の姿を絵に描いたのを見て思ったのは、私の隣にいる真っ白な謎のフレンズことクーちゃんの正体についてである。
一応、クーちゃんは自身が何のフレンズか分かっているようだが、クーちゃんが私達に正体を知らせることに失敗して以来放置したままである。
ここでリベンジしてみてはどうだろうか?
少なくともジェスチャーよりは分かりやすい筈だ。
そう言うとクーちゃんは私からペンをもぎ取って紙に大急ぎで動物だった頃の姿を絵に描いていく。
どうやらクーちゃんも自身の正体を伝えられなかったことに少しだけモヤモヤを抱えていたようで、かなりの勢いで描いていく。
その勢いのまま描いた絵をこれでどうだと言わんばかりに私達の前に叩き付ける。
………………………………どう言ったら良いのだろうか?
オオウミガラスの顔を見ても分かりやすく反応に困っているような顔をしている。
おそらく、オオウミガラスも正体が分かっていないのだろう。
もしかしたら、私と同じ様にアレに見えてしまっているのかもしれない。
なので、私は勇気を出して恐る恐るクーちゃんにこの絵の正体を聞く。
これは……ワカメか?
!?!?!!!!?!!!
クーちゃんは叫んだ。
無音の雄叫びを上げて部屋の中をピンポン玉のみたいに跳ね回るように高速で飛行する。
どうやら自信作を私にワカメと言われたのが相当ショックだったらしく、飛び回った後は私のベッドの上でふて寝し始めた。
しかし、このワカメみたいな生物は何なのだろうか?
今度、司書が来たときにでも聞いてみよう。
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