第127話 流れ着いた場所

 こりゃ、厄介なのが出てきたわね。


 アカギツネは目の前に現れた大型のセルリアンを前にして溜め息を吐く。


 現れたのは身体に黒色の斑のような模様の入った緑色のセルリアンと同じ形をした中型のセルリアン。


 オタマジャクシの尾とクジラの頭を持ち、発達した二本の前足で地を這うように進んでくる。

 そのセルリアンを見てコイちゃんは確信したように呟いた。


 やっぱり見たことがある。


 セルリアンの森には全く見知らない形のセルリアンが多くいたが、中にはコイちゃんが見知った形のセルリアンも混ざっていた。

 そのセルリアンはずっと昔に例の異変の前に起きた異変、女王事件でジャパリパークに現れたセルリアン達と同じ形をしている。


 このセルリアンの集団の向こう側からアカギツネが追い続けていたフレンズ型のセルリアンの匂いが漂ってくる。


 対峙の時は近い。


 しかし、このセルリアンをどうにかしなければ先へ進めそうにない。

 セルリアン達がフレンズ達を目掛けて襲ってくる。


 オオウミガラスも腹を決めて野生解放して構えるが、セルリアン達はまるでオオウミガラスが見えないかのように素通りして他のフレンズ達を襲う。


 オオウミガラス、先に行きなさい。

 どうやら呼ばれてるのはアンタだけみたいだから。


 アカギツネがそう言ってオオウミガラスに先を行くように促す。

 しかし、オオウミガラスはアカギツネ達を置いて行くことは出来ないと言う。


 あのセルリアンに会って確かめなきゃいけない事があるんでしょう?

 後で必ず追い付くから。

 さぁ、行きなさい!!


 アカギツネに強く言われてオオウミガラスはセルリアン達の間を抜けて走り出す。

 森の先で待ち受ける異変の元凶と会うために……


 辿り着いた先は草原地方の海岸。


 私とオオウミガラスの旅が始まった場所で例のセルリアンは一人佇んでいた。


 保存シ……再現スル……失ワレタ……アノ頃……ヲ……


 うわ言のように一人言を呟いていた例のセルリアンはオオウミガラスが来たことに気が付いたのか、一人言をやめてオオウミガラスの方へ振り返った。


 頭部には一対の歪んだ角と一対の翼。

 感情を感じさせない虹色の光彩を持つ瞳。

 そして、私と同じ顔……


 コイちゃんの話に出てきたセルリアンの女王の特徴を兼ね備えたセルリアン。

 おそらく、セルリアンの女王だ。


 新たに生まれてしまったジャパリパークの驚異。


 あなたのしたかったことは何?


 オオウミガラスは私にそっくりな女王に問い掛けた。


 しかし、女王はオオウミガラスの質問を無視するかのような話をする。


“かがやき”ハ何時カ失ワレル。

 我々、セルリアンハソレヲ保存シ再現スル。


 オオウミガラスはまるで機械のように感情を感じさせない女王に対して確信しているかのように言葉を返した。


 それはあなたのしたかった事じゃないよね。


 女王はオオウミガラスの言葉が聞こえていないのか、はたまた言葉は喋れるが意志疎通が出来ないのかは分からない。


 女王はオオウミガラスに向けて三ツ又の槍の先端を向ける。


 女王曰く、女王自身はまだ完全ではないらしい。


 私が渡したオオウミガラスの御守りの中にまだ“かがやき”が残っている。

 それを奪えば女王は完全な存在となる。


 戦うしかない。

 始めから分かっていた事だが、オオウミガラス自身はそうならないことを心の何処かで期待していた。

 それも無意味だったとオオウミガラスは悟る。


 戦うしか……ないんだ。

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