第123話 聖域の決着
この硬質化したセルリアンの表皮は動く度にボロボロと剥がれ落ちて行くが、その下には既に新しい装甲が形成されている。
多少柔らかいだろうが、それでもイッカクの槍が貫けない強度を維持していた。
なら、最も柔らかいところは……
イッカクは注意深く超巨大セルリアン乙型の様子を確認して、唯一貫けそうな部分を見付ける。
主砲の付け根。
最もよく動かすその部位は激しく装甲が剥がれ落ちて、時々柔らかい表皮が露出する。
イッカクは超巨大セルリアン乙型の表面を滑るように泳ぎ、主砲の根元に槍を突き刺した。
瞳に野生解放の輝きを宿したイッカクは突き刺した槍を両手で握り、身体を思いっきり横に捻りながら無理矢理振り抜いた。
ザン!
巨大すぎる主砲は野生解放した全力の一撃でも半分ほどしか切れなかったが、その重過ぎる自重により根元からポッキリと折れる。
危険な部位を破壊してある程度の安全を確保したイッカクはセルリアンの弱点となる石を探し始めた。
超巨大セルリアンの装甲をカツカツと槍で突きながら弱点は何処だと探し回る。
カツン
突然、槍で突いた超巨大セルリアン乙型の装甲の一部が勢い良く弾け飛んで、それに激突したイッカクは装甲と共に大きく吹き飛んだ。
完全に油断をしていたイッカクは突然の出来事に怒りを露にする。
イッカクは超巨大セルリアン乙型を倒すためにもう一度向き直る。
だが、目の前には自身の目を疑いたくなるような光景が広がっていた。
先程、へし折った筈の主砲が直っており、超巨大セルリアン乙型の主砲から黒い石柱が発射される。
だが、海中でのアドバンテージはイッカクにある。
その筈だった。
黒い石柱を避けた直後に来る筈のないもう一つの黒い石柱が飛来する。
その黒い石柱は先程の石柱より遥かに小さいこともあって、イッカクは咄嗟に槍を振ることにより、軌道を逸らして直撃を免れることに成功した。
超巨大セルリアン乙型の表皮には先程装甲を弾き飛ばした為か穴が空いている。
その穴からイッカクの見ている前で小さな砲身が生えてきた。
それに合わせて次々黒いセルリアンの装甲が弾け飛び、穴が空いて小さな砲身が次々と生えてくる。
砲身を増やせば海中と接触する表面積が増えて石化が早まるのだが、そうまでしてもイッカクを排除しなければならないと感じたのかもしれない。
超巨大セルリアン乙型はイッカクを驚異として認識した。
まるで地響きのような雄叫びが海中に響き渡る。
それと共に全ての小さな砲身の照準がイッカクへと向けられ、無数の黒い石柱が発射された。
イッカクは咄嗟に槍を振って黒い石柱を弾き飛ばすが、圧倒的な物量を捌く事が出来ずその身体に小さな石柱を何本も喰らいながら、イッカクは海底の岩へ叩き付けられる。
そして、トドメとばかりに動けなくなったイッカクに巨大な主砲が向けられた。
万事休すか。
そう思われた矢先に超巨大セルリアン乙型の身体に変化が起きる。
超巨大セルリアン乙型の身体が黒色から虹色へと変化して、大爆発を起こした。
おそらく、地上で超巨大セルリアン甲型が倒された瞬間だったのだろう。
イッカクは薄れ行く意識の中、遠出をしていた筈の母さんと呼ばれるフレンズとドルカ達の声を聞き、助けに来てくれたと悟って意識を手放した。
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