第116話 例の異変

 無事に図書館へ避難する事に成功した。

 おそらく、図書館の中にこれほどまでにフレンズ達が集まったことは初めてではないだろうか。


 しかし、集まったフレンズ達の表情は暗く、各々不安を囁きあっている。


 そう言えば、逃げる最中に電子音声で警告文が流れていた。

 逃げるのに必死だった為に全文を聞き取れたかは微妙な所だが、重要そうなキーワードを拾うことは出来た。


 サンドスター・ロー

 超巨大セルリアン


 もしも聞き間違いでないとするならば、あの黒い粒子がサンドスター・ローなのだろう。

 サンドスターとの関連性は不明だ。


 それは追々解明するとしよう。


 それよりも私はあの黒いセルリアンの形状に気を取られていたが、あの表皮の質感に軽い既視感を覚えていた。

 外の世界にセルリアンは居ないので勘違いなのだろうが、頭の片隅でどうにも引っ掛かる。


 とりあえず落ち着いたところで、中央のテーブルに司書、ブラックジャガー、コイちゃん、そして私が集まる。


 これより情報の整理と今後の作戦についての会議が行われる。


 まず、あのセルリアンは何なのか?

 あの黒いセルリアンは“例の異変”が起きた際に出現した超巨大セルリアンと言うもののようだ。

 かつて、ジャパリパークを壊滅寸前まで追い込んだ存在。

 恐ろしい程の固さに加えて、回復能力まで備えている規格外のセルリアン。


 弱点は水。

 ならば、ジャングル地方に誘い込んでスコールを浴びせることに成功すれば倒せるかもしれない。

 だが、あの巨大セルリアンが出現している限りは雨が降ることはないそうだ。


 コイちゃんの情報によると気候制御システムがサンドスター・ローの影響を受けて天気を晴れに固定してしまうらしい。

 放置すれば最終的に全ての地方が砂漠化してしまうようだ。


 あるんじゃないかと思っていたがやはり存在していたか。


 もしも、この技術を持ち帰る事が出来れば自立稼動兵器達によって半砂漠化した土地を再生できるかもしれない。


 脱線した。


 では、例の異変の際はどのようにして巨大セルリアンを倒したのだろうか?


 コイちゃんによれば、昔は守護けものと呼ばれる強大な力を宿したフレンズが居り、守護けものを筆頭に戦闘力に自信のあるフレンズが集まり巨大セルリアンを退治したようだ。


 だが、守護けもの全てが力を失って消滅し、フレンズの大半が巨大セルリアンの犠牲となってしまった。


 何故そこまで被害が拡大したのか?


 例の異変で出現した巨大セルリアンは一体だけでなく、何十体も同時に出現していたからのようだ。


 今回は1体だけだったが、アレが何体も出現していたらと思うとゾッとする。


 コイちゃんはそこまで話すと悲しい目をしながらそっと呟くように言った。


 もしも、あの時に園長が居てくれたら例の異変もどうにかなったかもしれない。


 コイちゃんの話では園長はフレンズ達の力を引き出す不思議な御守りを持っていたらしい。


 そこで司書が何を探していたかも判明した。


 司書は何れ例の異変がまた起きるだろうと予測し、フレンズ達の力を引き出す御守りを探していたようだ。


 それは何故かパークセントラルではなく、このエリアの何処かに存在するのだと言う。


 そして、その事を教えた人物の名を聞き、私は驚愕する。


 その人物の名は私の祖母と同じ名前だった。

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