第110話 レース会場
ああ……眠い……
予想以上にヨーロッパビーバーと話し込んでしまい、今日は少しだけ寝不足である。
この睡眠時間の足らない感覚は久々に感じるものだ。
最近はあまりにも健康的過ぎる生活を送っていた為か反動が凄まじい。
そして、本日がスカイレースの開催日。
やはり司書達は開催ギリギリまで追い詰められていたようだ。
特等席と言う山岳の山頂にある座り心地の良さそうな岩の上に腰を降ろす。
座り心地が良さそうとは言ってもそこら辺にある他の岩と比較すればの話である。
贅沢を言うなら何かクッションが欲しい。
ここからならばスカイレースのコースを一望出来るようで、コースの目印となる旗を持ったフレンズがそこかしこに立っているのが見える。
司書は私の案から一工夫加えたようで、旗の色が赤から紫と虹色に分けてある。
おそらく、虹色の順番通りに進むことになるのだろう。
双眼鏡で覗き込むと旗には“ソフトクリーム”とか“おみやげ”等の文字が書いてある。
何処かの倉庫で見付けてきた物をそのまま使用しているのだろう。
文字の読めないフレンズは気にしないだろうが、私からすれば非常にシュールである。
おみやげ……
その隣で文字の意味に気が付いたオオウミガラスが微妙な顔をしてぽつりと旗に書いてある文字を呟いた。
夜な夜な文字の練習をしていた甲斐があってかオオウミガラスはひらがなならば問題なく読めるようになったようだ。
他は漢字やらカタカナで書いてあるためオオウミガラスには読めなかったようだが、私の顔を見て似たような事が書いてあることを察した。
スタート地点と思われる場所には既にたくさんのフレンズ達が集まっている。
参加者は鳥のフレンズが約半数、他は人力飛行機での参加のようだ。
参加者の中にトナカイの姿を見付ける。
どうやらスカイレースへの参加に無事間に合ったようだ。
ただ、スカイレース開始前に既に疲労しているように見えるが大丈夫だろうか?
他にも知り合いが居ないか確認するとアメリカバイソンの姿を見付ける。
確か、ハンターの三人だった筈だ。
他の二人はどうしたのか探してみると、山頂の見学者達の中に混じっていた。
ブラックジャガーはこちらが見ていることに気が付いたのか、私の方を見て招き猫のように拳を握って手首を曲げる。
そう言えば、ヒョウもそのポーズをやっていたか。
ネコ科のフレンズの挨拶か何かなのだろうか?
最初に会った時もやっていたような気がするが、あの時は色々気が気じゃなかったので気にしなかったのだと思う。
トラはやっていなかったと思うが、あれはあちらが全く余裕のない状態だったからかも知れない。
他には見学者の中に森林地方で出会ったガラパゴスゾウガメやダーウィンフィンチ、砂漠地方のヒメアルマジロ、水辺地方のミシシッピワニとオオサンショウウオ、草原地方のカリフォルニアラッコにケープキリン。
懐かしい顔がたくさんある。
見学者達がざわつき始めたので下を見るとフレンズ達が人力飛行機に乗り込んでスタートラインに並び始めていた。
そろそろスカイレースが始まるようだ。
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