第109話 空の旅

 最近は以前の旅を思い出すようなことが多い。

 眼下に広がる雄大な景色を見ながら私は溜め息を吐く。


 私達を遥か上空まで拉致してきたのはスカイレースで忙しい筈の猛禽トリオ。

 勝手に他人を連れ去るなとしっかり言ったと思うのだが……

 どうやら、説教が足りなかったらしい。


 私の横に並走する形で猛禽トリオの中で手が空いているハクトウワシがハローと言いながら顔を覗かせた。


 私の顔を見て何かを察したハクトウワシは必死に今回の件の弁明を始める。


 彼女達はスカイレースの開催までに至ったのは私が最初に人力飛行機を作ってくれたおかげと考えて、何か私に対してお礼をしたいと考えていたらしい。

 そこで、彼女達が思い付いたのはサプライズで私達をスカイレースを観戦できる特等席へ招待すると言うことのようだ。


 なるほど、彼女達の感謝の念はしっかりと伝わった。

 だが、それとこれとは別問題である。

 招待するならば一度私達の目の前に降りてその旨をしっかりと伝えるべきだ。

 勝手に後ろから飛んできて上空へ連れ去るなど言語道断である。


 ……地上へ降りたら覚悟しとけ。


 猛禽トリオは私の怒気に震えながら山岳へと私を連れていく。

 そして、地上に降りてから私は猛禽トリオに説教をする。


 これに懲りたら他人を誘拐するようなことは二度としないでもらいたい。



 猛禽トリオに山岳に連れてこられた私は山小屋の中で夜を明かすことにした。


 山小屋の中には私とオオウミガラス以外にも今回のスカイレースの参加者と思わしきフレンズが何人かいる。


 日記を書いていると私の方へとあるフレンズがやってきた。


 あなたが噂のゴリラさん?

 違う。


 間髪いれずにゴリラであることを否定した私に対して彼女はポカンと口を開ける。

 相も変わらずゴリラ扱いされてしまうのは何故なのだろうか?

 フレンズ違いだったと慌てて戻っていく彼女を引き止める。


 私はゴリラではないが、おそらく探しているのは私の事なのだろう。

 ゴリラに似ているがゴリラではないことを懇切丁寧に教える。


 私をゴリラと勘違いしていた彼女の名前はヨーロッパビーバー。

 どうやら彼女が人力飛行機を木材だけで量産した張本人のようだ。

 一人で……


 一人と聞いて一瞬耳を疑ったが、セグロジャッカル達が素手で木を切り裂いていたことを思い出して納得する。

 フレンズ達ならば下手な工具を使うよりも素手で作業した方が効率が良いだろう。

 人力飛行機を作れるくらいの技術があるなら、人の世界でも引っ張りだこになる筈だ。


 そんなヨーロッパビーバーが私に相談を持ち掛けてくる。


 何でも巣作りに悩んでいるらしい。


 人力飛行機を作れるような技術者が何を悩んでいるかさっぱり分からないが、とりあえず今作っている巣を絵に書いてもらう。


 枝で作り上げた穴蔵だった。


 身体に合わせて大きくしたらしいが、崩れやすかったりとどうにも住み難いらしい。


 彼女は手先は器用で改良も得意だが、ゼロから何かを作り出すのが苦手なのかもしれない。

 最もゼロから何かを作り出せる人もかなり少ないが……


 巣作りに悩むヨーロッパビーバーにログハウスはどうだろうかと提案する。


 今宵は長くなりそうだ。


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