第107話 断崖の向こう側
まるで絡まった糸が勝手に解いて行くような感覚だった。
もしも、ここが中心なのだとしたら、私がここへ流れ着いたのは決して偶然ではなくなる。
私達が探していたアレがこのジャパリパークに存在するとでも言うのか?
いや、冷静になれ。
未だに肝心な記憶は失われたままである。
推測を確固とした物に変えるにはピースが足りない。
日記を遡ってみても私は故郷に帰ることしか記述をしていないので、アレの手掛かりを見付けた訳ではないのだろう。
ないのだろうか?
考えれば考えるほどに自分自身が分からなくなってくる。
私は──
思考の底無し沼に嵌まろうとした私をオオウミガラスの声が現実へ引き戻した。
なんか汗がすごい出てるけど大丈夫?
私は自分の額を手の甲で拭う。
凄い量の冷や汗だ。
何にしてもこんな場所で人の負の遺産を目の当たりにするとは思わなかった。
私は気分転換をするように飛行機の周囲の景色に目を向ける。
サバンナ地方の北端付近、北を見れば断崖絶壁と海を挟んだ向こう側にうっすらと見える別のエリア。
それと先程まで飛行機に気を取られて気が付かなかったが、ここから少し先に別エリアと繋がる橋が見えた。
陸路でこのエリアに来るのならあそこを通ることになるのか。
フレンズ達の話にあの橋についての話題が出なかったが、何故なのだろうか?
私は軽い疑問を抱いて次は橋に向かって歩き出す。
橋の手前には交通管理をしていたと思わしき小屋が存在しており、肝心の橋は骨組みを残して崩壊していた。
なるほど、橋は既に使用できないほど崩壊していた為にフレンズ達の間ではなかった事にされていたようだ。
やはり、別エリアに移動するにしても船の確保が必要になりそうだ。
さて、せっかくここまで来たので双眼鏡を覗いて別エリアの様子を確認してみる。
針葉樹が見えることから、寒冷な気候に属する地方のようだ。
雪は降っていない。
私に分かるのはこれくらいなのだが、他にも気になるものが見える。
あれは……キャンプ場だろうか?
木々の間にテントやログハウスと思わしきものが見えたが、どちらにしろ行くことの出来ない場所だ。
草原地方を目指して引き返すことにしよう。
このサバンナ地方でもバスを発見することは出来なかったが、このジャパリパークで何が起こったかを示す重要な物を発見することができた。
決して無駄足ではなかった。
ジャパリパークと外の世界。
一体どのような関係があったのかは現時点では不明なことが多い。
可能性としてサンドスターを利用した何らかの技術が開発されていた事も考えられる。
それこそ、天候を制御する神の領域に手が触れるような技術があったのかもしれない。
だが、そんな技術も一般化する前に廃れてしまったのだろう。
もしも、一般化していたのならば何者かが意図的に情報を消していたとしても、完全に情報が無くなると言うことは無い筈だ。
……祖母はサンドスターについて何か知っていたのだろうか?
いや、知っていた筈だ。
知っていながら祖母は口を固く閉ざしたのだ。
悪用されない為に……
あるいはサンドスターの情報を消した人物の為に……
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