第106話 三角

 さて、サバンナ地方の楽しい行事の話は置いて、本来の目的である飛行機について聞いてみよう。


 アフリカゾウ曰く、飛行機はこの地方ではその形状から丘に刺さる三角と呼ばれている。


 ……墜落してるじゃないか。


 飛行機があるのなら空港が存在すると考えていたのだが、どうやらこのエリアには空港は存在してないらしい。

 そうなるとバス発見の望みは薄くなるか。

 まぁ、そうなるかも知れないとは考えていたので衝撃は少ない。

 それに今も稼働しているらしい牧場の存在があるので、バスの代わりになる機械があってもおかしくはない筈だ。


 一先ず、墜落した飛行機を見に行こう。

 バスが発見できなくても何かしら知見は得られる筈だ。


 暇ならばアフリカゾウも一緒に行かないかとオオウミガラスが誘ってみたが、アフリカゾウは応援のためにスカイレースの会場へ向かうようなのでここでお別れとなった。


 私はスカイレース開催まで一週間くらいあるのではないかと思っていたが、実はもう開催直前くらいだったのかもしれない。

 どうやら司書達はかなり逼迫した状況だったようだ。


 そう言えば、司書が自分の知らないところで計画が進んでたって愚痴を溢していたので、もしかしたら頼まれた時には既に猶予はあまり残されていなかったのかもしれない。


 私達は二人でサバンナを行く。

 丘に刺さる三角と呼ばれている飛行機のところへ向かう。


 長い時間歩いた。

 途中、ぬかるみに嵌まると言うアクシデントこそあったが、順調と言えば順調な旅路だった。


 昼が過ぎて、日が徐々に傾いてきた頃に私達は到着する。

 オオウミガラスは墜落して丘に垂直に刺さっている飛行機を見てすごいと言っているが、私は別のことを考えていた。


 何故、こんなものがここに……?


 それは確かに飛行機だった。

 たが、その飛行機はただの飛行機ではなかった。


 戦闘機


 形状の特徴からしておそらくは第三次世界大戦の極初期に運用された旧世代のもの。

 ミサイルは……使用されているようだ。

 破損状況からして、墜落と言うよりは撃墜されたように見えた。

 地上から撃ち抜かれたか。


 ジャパリパークが戦火に巻き込まれた?

 それにしては各地に兵器による攻撃の後が見られないし、ジャパリパークに兵器があった痕跡は何もない。


 ……戦闘機を持ち出してまでどうにかしなければならない異常事態がこのジャパリパークで起きてしまったと言うことなのだろうか?


 私はこのジャパリパークが外界から隔絶された世界だと認識していたが、その認識は間違っていたのかもしれない。


 抹消された情報、謎のエネルギー資源、壊れた戦闘機、存在しない戦闘跡。


 そもそも、何故戦争が起こったのか?

 その理由は当時を生きた人すらも首を捻るほど不可解な点が多く、本当は何か別の理由があったのではないかと言われていた。


 このジャパリパークは外界から隔絶された世界ではない。


 この島こそが……中心だったのかもしれない。

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