第105話 闘争のサバンナ

 サバンナで朝を迎える。

 朝焼けを眺めながら食事を取っているのだが、茶色いイメージがこびりついているためか、ここがサバンナだと自覚するとどうにも違和感を感じてしまう。


 さて、新緑の大地であるサバンナを踏破して飛行機があると言われてる地点へ向えば良い。


 今回は木々が覆い繁ったジャングル地方とは違い、非常に見晴らしの良いサバンナ地方。

 港で手に入れた双眼鏡が役に立つ。


 私は早速双眼鏡を使って周囲を見渡すが、それらしいものは見当たらない。

 距離が遠過ぎるか?


 大体の位置は事前に把握しているので、素直に歩いて向かうことにしよう。


 そして、遂に第一村人を発見。

 いや、これは逆に発見されたと言うべきか?

 そして、村人から歓迎の言葉が投げ掛けられる。


 ようこそ!咆哮と闘争の国、サバンナ地方へ!うー!ぱおーん!


 村人はうー!で両手をグッと胸元で溜めた後にぱおーん!と腕ごと大きく開く。

 ……仕草は大変可愛らしいがとても物騒な単語が混じっていたような気がする。


 彼女はアフリカゾウ。

 サバンナ地方に縄張りを構えるフレンズの一人。

 陸上最大の動物のフレンズとあって、その身長は私より頭1つ分大きい。

 首に巻いてあるマフラーは器用な長い鼻の代わりなのか、アフリカゾウの意思で自在に動かせるらしい。

 ……ただの服ではないと思っていたが、フレンズによっては身体の一部のように動かせる物もあるようだ。


 ところで、どうして咆哮やら闘争やらとやたら野性味溢れる単語が並んでいた?


 アフリカゾウによるとこのサバンナ地方では不定期に“けもトーナメント”なるイベントが開催されるらしい。

 各地方の猛者もやってくるけもトーナメントは様々な種目でフレンズ達が切磋琢磨をしている。


 直近であったのは水辺地方へ出張しての『イカダ早渡り大会』

 そう言えば、以前に港にやってきたミシシッピワニがイカダ渡りが流行っているとか言っていたが、もしかしたらこの事だったのかもしれない。


 次回のけもトーナメントの舞台は『スカイレース』

 猛禽トリオのイベントに乗っかる形で身内で開催されるようだ。


 ちなみにアフリカゾウは高所恐怖症の為、今回は参加を見送ったそうだ。


 そして、気が早いが次々回のけもトーナメントは『砂漠の灼熱マラソン』

 どうやら少し前にフタコブラクダがサバンナ地方へやってきて、便利な近道が開通した事を知らせにきたらしい。


 砂漠と聞いてオオウミガラスは暑さにやられたことを思い出したのか小さく呻き声を上げる。

 この様子だとオオウミガラスが日中の砂漠を歩くことはもう決してないだろう。


 しかし、話を聞いている限りではサバンナ地方のフレンズは、他のどの地方のフレンズよりも面白おかしく生きている。


 羨ましい限りだ。


 少し気になったので、アフリカゾウにフタコブラクダの行方を聞くと、現在は草原地方の牧場に居るのではないかと返事が来た。


 以前に『ミルク早飲み対決』でお世話になったらしい。


 ……おい、待て!

 その牧場は今も稼働しているのか!?


 私は猛烈に草原地方へ引き返して牧場へ行きたい衝動に駆られたが、ここはぐっと堪えて当初の目的を果たすべきだ。


 途中で目的が変わるとどちらも中途半端になり、残念な結果に終わることが多い。


 ここは堪えなくては……!

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