サバンナの三角

第103話 森を抜けて

 翌日、私は図書館のソファーの上で目を覚ますとニホンオオカミが私の顔を覗き込んでいた。

 私が目を覚ましたのに気が付いたニホンオオカミが姐さんおはようと言ってくる。


 昨日からニホンオオカミは私の事を姐さんと呼び始めた。

 何故かは分からない。


 それにしても図書館で寝顔を覗き込まれるのは既視感のある光景だ。

 前は司書が私の事を覗き込んでいたか。


 今にして思えば、あの時の私は眠りながら涙を流していたのだろう。

 気にならない訳がない。


 今回はニホンオオカミの顔を見る限り特に理由はなさそうだ。


 ……顔が少しベタ付いてる。

 梅雨なのでじめじめとした暑さのせいで寝汗でも掻いたのだろうか?


 外へ出ると朝日を浴びて黄金に輝くトロフィーと黄金の輝きに魅了されてる司書の姿が目に入った。


 昨日の夜に行った塗装はすっかり乾いているようだ。


 一先ず、スカイレースの開催については問題は無さそうだ。

 私も私でサバンナ地方にあると言う飛行機を探さなければならない。


 司書から御礼のジャパリまんを受け取って、司書とセグロジャッカル、そしてニホンオオカミに見送られながら、私とオオウミガラスは図書館から旅立った。



 さて、地図を見る限りでは森林地方を北西へ進んで行けばサバンナ地方へ行ける筈だ。


 結局、司書にジャパリまんと交換で渡す筈だった物は手元に残ったままか。

 クーちゃんのところの大樹で拾った虹色の鉱石を使ってこっそり作った手作りのネックレス。

 使い道が無くなってしまった。


 図書館から出てしばらく進む。

 今度はしっかりと獣道を確認しながら進んでいるため迷わずにサバンナ地方まで向かえている。


 今回は順調だ。


 雨が降ったことを除けば……


 長距離を歩くといつの間にかずぶ濡れになる程度のしとしとと降り続ける弱い雨。

 私はレインコートに着替えて、オオウミガラスはお気に入りの傘を広げて森の中を進む。


 梅雨時の旅なので危惧していた事ではあるが、こうして降られると気分が萎えてしまう。

 近々スカイレースがある筈だが、天気の方は大丈夫なのだろうか?


 オオウミガラス曰く、フレンズの中には何となくで天気予報が出来る子がいるらしく、天気に関しては心配しなくても大丈夫とのこと。

 鳥の子が出来ることが多いらしい。

 そして、何故かイッカクも天気予報が出来るそうだ。


 鳥は空を飛ぶのに天候が重要なので、天気予報が出来るのは納得出来るのだが、海の中で暮らすイッカクがどうしてそんな技能を持ってるのだろうか?


 まぁ、生物学者ではない私が考えたところで分かる訳もない。


 ジャングル地方程ではないが、そこそこ賑やかな筈の森林地方も雨が降るとフレンズ達が何処かに隠れてしまうせいかとても静かだ。


 不気味と言うほどではないが、森が寝息を立てているような穏やかな静けさに満ちている。

 天気も違えば地方によっては違った一面が見れるのかもしれない。


 そろそろ、サバンナ地方が見えてきそうだ。

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