第102話 妖怪出現
しばらく余った木材で遊んでいると司書とオオウミガラスが帰って来た。
司書は遊んでいる私達をジト目で見て、何をしているのでございますかと聞く。
ジェンガ
長方形のブロックを3つ並べて正方形を作り、互い違いに重ねていった柱から柱を崩さないようにブロックを抜き取り、柱の上に重ねていく遊びだ。
既に試合は大詰めでセグロジャッカルが手を細かくプルプルさせながら、慎重にブロックを抜いている。
と、ここで邪道に走る者がいた。
ここでセグロジャッカルが成功させてしまったら自分が負けると判断したニホンオオカミはそっとセグロジャッカルの背後に回ると、ケモ耳に息を吹き掛けた。
セグロジャッカルはケモ耳に息を吹き掛けられて力が抜けたのかカツンと柱にブロックをぶつけてしまい、慌てて柱を押さえようとするも無惨に崩れ落ちてしまった。
卑怯者ー!!と、怒ったセグロジャッカルとニホンオオカミの追いかけっこが始まる。
やはり、陸上組は足が速い。
木々の間を車並みの速度で走り回っている。
さて、先程からジト目で見てくる司書に言い訳をしなくては……
ただ遊んでいただけではないぞ。
一応、トロフィー以外に表彰台や旗に使う棒等スカイレースの運営に役立ちそうな物も作ってある。
ただ、二人の協力のおかげで予想以上に時間が余ってしまったから、つい息抜きで遊んでしまっただけだ。
大丈夫、問題ない。
スカイレース開催には間違いなく間に合うから。
せっかくだから司書達も一緒にやってみないか?
私が司書に言い訳と勧誘をしている間にセグロジャッカルがニホンオオカミを捕まえたようだ。
ルール違反だと思うんだけど!と、ニホンオオカミを捕まえたまま私に突き出す。
ふむ、確かにルール違反に当たるかもしれない。
予め、定めたルールでは相手への直接の妨害は行わないこととある。
特に罰則を定めた訳ではないが、このままだとセグロジャッカルの気が収まりそうにない。
仕方無い。
私がお仕置きをしよう。
別にやりたい訳ではないのだが、ルール違反をしたニホンオオカミが悪い。
だから、これは仕方の無い事なんだ。
大義名分を得たなんて欠片も思っていない。
オオウミガラスが私の手の動きを見て、なんか気持ち悪いとか言ってるが敢えて聞かなかった事にする。
さて、ニホンオオカミよ。
少しだけそのふわふわなケモ耳を貸してもらえないだろうか?
10分後……
そこには放心状態となったニホンオオカミと私に怯えるフレンズだけが残った。
セグロジャッカルは私と目が合うとさっとケモ耳を手で隠して、私に触られないように固くガードする。
いや、ニホンオオカミはルール違反をしたからやった訳で、無差別にやるつもりは欠片もないのだが……
何故だろう。
私は一時の充足感と引き換えに何か大切なものを失ってしまったような気がする。
誰だ。
今、私の事を妖怪ミミモフリとか言った奴は?
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