第101話 製作中
私は指示通りざっくりとカットされた木材を前にしてノミと木槌を振りかざす。
セグロジャッカルが大体私の言う通りにトロフィーっぽい形にしてくれたので、私が行うのは仕上げ作業のみとなる。
さすがに二人は細かい作業が苦手なようで、ここからは私一人での作業だ。
私には抽象画を理解する芸術的感性はないが、出来うる限りトロフィーらしい形へと整えていく。
そう言えば、セグロジャッカルとニホンオオカミはスカイレースに参加しないのだろうか?
そう問うとセグロジャッカルは足が地面に付かないのは苦手だからと言う。
ニホンオオカミもセグロジャッカルとほぼ同じような理由でスカイレースに参加したくないらしい。
確かに空を飛ぶのは怖い。
私も極力空を飛ぶような事態には会いたくないものだ。
怖いと言えば……
そう言ってニホンオオカミが何やら興味深い事を話し始める。
最近、森林地方で妙な噂が広まり始めているらしい。
何でもフレンズ型のセルリアンが出没したのだそうだ。
セグロジャッカルの話によればフレンズ型のセルリアンと言うのは実際に過去に存在したらしい。
外見上はフレンズと見分けが付かず、そのセルリアン自身も自分の事をフレンズだと思い込んでいた。
その容姿はとあるネコ科のフレンズに酷似していたと言う。
妙なセルリアンも居たものだ。
しかし、そのセルリアンはかなり昔に居なくなってしまい、誰も何処へ行ったかは分からない。
だが、今回のニホンオオカミの話は昔の話ではなく、極最近の出来事のようだ。
頭から角を生やしたフレンズそっくりな形をしたセルリアンが森林地方で目撃されたらしい。
ニホンオオカミが実際に見たわけではないようだが、そのセルリアンは中型のセルリアンでありながら大型にも引けを取らないプレッシャーを放っていたようだ。
あの小屋で調べたデータの中にはフレンズ型のセルリアンに関する記述はなかった。
何事に置いても例外と言うものは存在する。
おそらく、そのセルリアンはセルリアンとしてではなく、フレンズとして扱われていた。
自身をフレンズと思い込むような個体だ。
その性質もフレンズに近かったのだろう。
だが、今回のフレンズ型のセルリアンが前回のフレンズ型のセルリアンと同様に穏やかな性質を持っているとは限らない。
ニホンオオカミの知る限りでは被害は出ていないが、目撃したフレンズ曰く、この世の全てを憎んでいるかのような目をしていたと言う。
少なくとも他のセルリアンと違って感情はあると言うことか。
……憎しみの理由。
同胞を倒された憎しみと言うのが最もしっくり来るか?
会話が出来れば和解も可能かもしれない。
まぁ、様子を聞く限り可能性は低いと思うが……
雑談をしながら彫り進めて行くと、大分トロフィーとして形が整ってきた。
ヤスリでノミで出来た細かい凹凸を削って行く。
よし!
完成だ!
二人のおかげで予想以上に早く出来てしまった。
木材はまだまだ余ってるので、もう少し色々と作ってみようか。
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