第100話 レースに向けて

 一つ一つ問題を片付けて行こうじゃないか。


 まずはスカイレースのコースについて。

 公平を期すために司書は猛禽トリオからスカイレースのコースの決定を任されているようだ。

 鳥のフレンズだけあって草案は出来ているのだが、コースの目印に苦心しているらしい。


 山岳で行われるスカイレースだが、参加者全てが山岳の地形を把握している訳ではない。

 案内の矢印版を建てたところで大半のフレンズ達は矢印と言う記号の意味を理解してくれない。


 それならば、旗を使ってみるのはどうだろうか?


 スカイレースに参加しないフレンズ達を集めて各ポイントで旗を振ってもらう。

 矢印が分からなくても誰かが旗を振っていればそれを目印にしてくれる筈だ。

 それに他にメリットもある。

 旗を振ってるフレンズが通過した人数をチェックすれば、途中で脱落してしまったフレンズも把握できる筈だ。


 次に悩んでるのは優勝商品についてか。

 司書はジャパリまん1年分を商品にと思ったようだが、それだと味気無いと考えたらしい。

 だが、そこでどうして私の豪華料理が優勝商品と上がるのか……

 フレンズ達は食意地の張った者ばかりなのだろうか?


 優勝商品こそ何か形に残る物が良いだろう。

 例えば、優勝トロフィーとか。

 しかし、このエリアには司書の知る限りでは優勝トロフィーのような物は存在しないようだ。

 元々別エリアの行事なので無いのは当然である。


 では、無ければどうするのか?


 作るしか……ない……


 オオウミガラス達の期待の籠ったキラキラした目を見て、人力飛行機を復元した時の事が脳裏に蘇る。

 オオウミガラス、実はその目で見れば私が何でもしてくれると思ってるのではないか?


 ああ、その通りだ。

 私はそれに弱いんだ。

 そして、手先が器用で出来なくもないと言う事が断り辛さに拍車を掛けている。


 もう開き直るしかない。


 トロフィー作成に関して、足りないものを取ってきてもらうために、司書とオオウミガラスには港に向かってもらった。

 私を除けば港のショッピングエリアの商品を一番把握しているフレンズはオオウミガラスだけだ。


 さて、私は図書館に残って何をするのかと言うと、セグロジャッカルとニホンオオカミと一緒に現地で材料調達だ。


 私は図書館の本を頼りにトロフィーに使用する木を選ぶ。

 確か、ブナが木材に適していると書いてあったか。


 ブナは図書館から歩いてすぐの所に生えていた。

 木を切るくらいなら二人とも出来ると言っていたが、果たしてどのように切り倒すのだろうか?

 直径は約1メートル。

 普通に倒すのならチェーンソーが欲しくなる太さだ。


 セグロジャッカルとニホンオオカミが木に近付いて、手からサンドスターの輝きを放出し始めた。


 せーの!


 そんな掛け声で二人が輝く手を振り抜くと木が横に切断されて、大きな音を立てて倒れた。

 二人ともこれを切るくらいなら一人で余裕だったかもとか言いながら、人じゃ到底運べない重さの木を丸ごと広いところまで運んでいく。


 ……これは予想以上に早く仕事が終わるかもれない。

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