第99話 援軍到着

 歩きにくい……


 ニホンオオカミはまるで私に絡み付くかのように腕を掴んで、オオウミガラスが負けじと反対側に絡み付いてくる。


 ジャングル地方のトラは近付けば近付く程距離を取ろうとする性格だったが、対照的にニホンオオカミは射程内に入ると鉄に磁石を近付けた時のようにくっ付く。


 貴女達は私の装備品か何かなのか?


 そして、私はニホンオオカミとオオウミガラスを装備したまま遂に図書館へ戻ってきた。

 問題は司書が中にいるかどうかだ。


 私は図書館の扉を開けて中に入ると、タワーのように積み上がった本を運ぶセグロジャッカルと目があった。

 少々精気のない目をしているセグロジャッカルの瞳には、誰もが見てとれるくらいはっきりと文字が刻まれている。


 助けて、と。


 これはなかなか不味い時期だったのではなかろうか?


 セグロジャッカルがこちらをしっかり認識したのか、手に持っていた物を放り投げて私の方へやってきた。


 えんぐんだー!えんぐんだー!


 装備品にセグロジャッカルが追加された。


 援軍でございますね!


 装備品にハシブトガラスが追加された。


 そして、フレンズフルアーマーを装備させられた私は重量過多で押し潰された。


 重い……



 さて、抱擁による熱烈な歓迎から解放された私は早速司書に何事かと問い質す。


 森林地方近辺の取り巻く状況的にスカイレースの事についてだと思うのだがどうだろうか。


 大当たりだった。


 司書はスカイレースの運営について少々行き詰まっていたのだ。

 スカイレースについては過去にそのような事が行われていたと言う話だけが伝わっており、詳細は全く不明である。

 しかも、元々は別のエリアの行事であったらしく、このエリアとは完全に無縁だったのも情報不足に拍車を掛けているようだ。


 どうして私の知らないところでこんな急に話が進んだのでございますかと司書は嘆き、スカイレースの開催の速度を早めてしまった元凶の私はそっと視線を逸らした。


 あの猛禽トリオの熱意からして私がいなくてもその内スカイレースの開催に漕ぎ着けただろうが、計画が急速に早まったきっかけと言えば、間違いなく私が人力飛行機を復元してしまった事だろう。

 それを量産してしまったフレンズも大概ではあるが……


 スカイレースについては私にも責任の一端があるので、この件が落ち着くまでは司書達の手伝いをすることにしよう。


 ところで、別のエリアの行事である筈のスカイレースの話はどうやってこのエリアに伝わったのだろうか?


 もしかしたら、エリアを跨いで旅をしたフレンズがこのエリアにいるのかもしれない。

 スカイレースの話の発信源は誰なのか司書に聞くと、コイちゃんから聞きましたと言う返答が来た。


 コイは淡水魚だったような気がするのだが、果たして海を渡れたのだろうか?

 いや、フレンズになった影響で海水にも適応した可能性も考えられる。


 何処かでコイちゃんと出会ったら他のエリアについての話を聞いてみよう。

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