第98話 森の追跡者
私達をつけていたのは茶色いオオカミのフレンズ。
前にも見たことがあるような気がするが……
彼女の名はシマリスの発言によって判明した。
彼女の名はニホンオオカミ。
見たことあると言うのは気のせいではなく、森林地方から旅立つ際に私達を見送ってくれたフレンズだ。
本人曰く、私達をずっとつけ回していたのではなく、見守っていたのだそうだ。
少々怪しい気もするがフレンズの言葉なので、おそらくはそのまま意味なのだろう。
と、思ったがシマリスがニホンオオカミの発言に対して、私が物珍しいからつけてたのではないかと言う。
……どっちが本当の理由だ?
両方!
それにとニホンオオカミが付け加えてオオウミガラスの方へ向く。
あなたがヒトと一緒にいるのが気になったから。
意外な事にニホンオオカミは私が人であると始めから知っていたらしい。
そして、オオウミガラスの事も一方的に知っていたようだ。
オオウミガラスは思い当たる節がないのか、何故ニホンオオカミが自分の事を知っていたのか首を捻っている。
最近の森林地方では特にトラブルらしきものは起こっていない。
近々開催されると言うスカイレースに参加したいフレンズ達が山岳地方の方へ行っているらしく、森林地方にいるフレンズはいつもより少なくなっているようだ。
となると少々不安になってくるのが司書の行方についてである。
スカイレース開催がここまで大きな話になればこのエリアの相談役である司書にも話が行く筈だ。
そうなれば司書がスカイレース準備等で居ない可能性も十分に考えられる。
その事について皆に話すと、司書は図書館を三日以上空ける事はないとの返答が帰って来た。
そもそも司書は地形を無視して移動が出来る鳥のフレンズなので、その気になればこのエリアの端から端まで半日で移動出来る。
留守の心配はあまりしなくて済みそうだ。
昼寝の続きを再開するシマリスに別れを告げて私達は図書館を目指す。
そして、やたらとフレンドリーな性格なので予感はしていたが、案の定ニホンオオカミは私達に付いてきた。
ニホンオオカミ曰く、私とオオウミガラスには親近感が湧くらしい。
まぁ、私には日本人の血が流れているので、元々日本に住んでいたであろうニホンオオカミが私に対して親近感が湧くのは分かるのだが、オオウミガラスに対して親近感が湧くのは何故なのだろうか?
犬と鳥。
親近感が湧く要素は見当たらない。
そう思っていたのだが、ニホンオオカミはまるで世間話をするかのように爆弾発言をしてきた。
ニホンオオカミは絶滅種のフレンズだったのだ。
親近感の理由やオオウミガラスを知っていた理由が何と無く分かってきた。
オオウミガラスはツンドラ地方の博物館でフレンズになった。
あの博物館には展示物のない台座が幾つか存在していたので、その内の一つがニホンオオカミだったのかもしれない。
本人は絶滅したことについてあまり気にしていないようだが、世間話をするように暴露してくるのはやめてほしい。
以前のような衝撃は受けないが、その話を聞く度に複雑な気分になる。
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