第97話 獣道
獣道を辿って図書館へ向かう。
この森林から旅立ってから1ヶ月も経っていないが、やけに懐かしく感じる。
穏やかな気候の中で歩みを進めていると、砂漠地方やツンドラ地方が如何に厳しい環境だったかを実感する。
砂漠では収穫無し、ツンドラでは温泉と灯油を見付けたくらいだろうか。
もしも、船の燃料が見付からなかった場合は、灯油を代わりに入れることも考えなければならない。
いや、危険な賭けはするべきではないか。
幼い時に爆発させてしまった石油ストーブの二の舞は避けなければ……
そんな考え事をしているときに私は気が付いてしまった。
足音が一つ多いのだ。
立ち止まると謎の足音が止まり、再び歩き出すと足音も付いてくる。
余程身を隠すのが上手いのか、振り返ってもフレンズの姿は確認できない。
……どうやら何処かのフレンズの気紛れな遊びに巻き込まれたらしい。
私達を尾行して何が楽しいんだか……
特に害がある訳でもないのでそのまま私達は道を歩く。
途中、フェイントを掛けて振り向くと慌てて木の影に隠れようとするフレンズの尻尾の先が見えた。
尻尾だけでは何のフレンズか分からない。
さて、何回目で全身が見られるだろうか?
と、後ろに意識を向けながら歩いていたのが悪かったのか、目の前を向いた瞬間にメキッと何かが折れる音と共に誰かが落ちてきた。
突然の意識外の出来事に私の心臓が大きく跳ね、オオウミガラスも落ちてきた何かに対して悲鳴を上げる。
落ちてきたのは前に森林地方で出会ったシマリスだった。
背中を打ち付けたのか海老反りになって悶絶している。
木登りが得意なフレンズでも木から落ちることがあるようだ。
サルのフレンズなら様になっていただろう。
悶絶している間に私の事に気が付いたのか、片手を上げてこちらに挨拶をしてくる。
……ゴリラさんだと?
もう慣れたがゴリラと勘違いされるのはこれで何回目だろうか?
初めから数える気はないので、何回目かは覚えていない。
ジャングル地方と森林地方は隣接している筈なのにどうしてこうも誤解が広まってしまうのだろうか?
以前ヒョウが言っていたようにジャングルに引き籠ってなかなか出てこないせいで、実際見たフレンズが少なく容姿の特徴だけが広まってしまっているからかもしれない。
そして、私ことゴリラに関して大型セルリアンを一撃で倒しただのと、根も葉もない噂が広まっている。
今まで考えたことはなかったが、私のやたら誇張された戦闘力に関する誤解や噂が広まれば、私だけではなく私に似ていると言われているゴリラにも風評被害が行く可能性がある。
いや、既に被害にあってる可能性も高いか……
ツンドラ地方の入口で一生懸命風評被害を払拭しようとしていたトナカイの気持ちが分かったような気がする。
風評から目を逸らすように何気なく後ろを振り返ると、いつの間にか私達を追跡していたフレンズが私の真後ろにいた。
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