再びの図書館へ

第96話 密林から森林へ

 翌朝、いつの間にか戻ってきていたのかトラが小屋の中に居て、代わりにコンゴウインコの姿が無くなっていた。


 トラからコンゴウインコはまた遊ぼうと伝言を残して去っていったらしい。

 彼女はどうやらスカイレースに参加するために旅立ったようだ。


 ……もう開催の目処が立ったのか。

 私があの猛禽類トリオに人力飛行機を渡してから1ヶ月も立っていない筈なのだが……


 フレンズの行動力は凄まじい。


 ヘリまで案内して貰ったのに我ながら厚かましいと思うが、トラに森林地方まで道案内を頼む。


 果たして引き受けてくれるだろうか?


 引き受けてくれるのか……


 もしかするとトラは暇を持て余しているのかもしれない。


 お喋りなコンゴウインコが居なくなった道中は自然とトラとの会話も増えて、トラの性格も段々と分かってきた。


 一言で言えば、難儀。


 誰かと仲良くしたいが、羞恥心が先立ってしまい相手から距離を取ってしまう。

 そして、構わず近付いてくるフレンズには恥ずかしくって思わず手が出てしまうと……


 手が出る癖を無くしてしまえば、コンゴウインコのように初対面でも友好的なフレンズがいるのだから、すぐに仲良くなれる筈だ。

 それにコンゴウインコに限らず、フレンズは皆友好的なので、仲良くなること自体は難しくない。

 だが、癖と言うものは中々直るようなものではない。

 この先も苦労することになるだろう。


 そう言えば昨日の怪我は大丈夫なのかとトラに問い掛けると、もう直ったと返答が来た。

 フレンズは身体能力だけでなく、自然治癒力も高いようだ。


 だが、心配なので見せてほしい。


 そう言って近付こうとしたら、トラが私から物凄く距離を取って威嚇し始めた。

 足取りを見る限りは完全に治癒したようだ。

 それを確認できた私は満足してそれ以上深追いをしないで置くと、トラは一瞬だけ寂しそうな表情をする。


 難儀な性格だ……


 その後、黙々と歩みを進めて行くと昼前に地方の境界へと辿り着いた。

 地方の境に谷や山が合ったりして明確に区切られている事が多かった。

 今回も浅い谷に橋が掛かっており、地方の境界線がはっきりとしている。


 例外は遊園地や港のある地域と接続する地方の境目くらいだろうか。


 橋を越えて森林地方に足を踏み入れると、気候が切り替わって懐かしい空気が私達を包み込む。


 トラとはここでお別れだ。


 何だかんだジャングル地方の旅で最後まで付き合わせてしまった。

 次に会ったときに何か困ったことがあれば力になろう。


 さて、ここからはオオウミガラスと二人旅になる。

 位置的にはここからでも図書館までは比較的と近いらしいが、果たして迷わずに辿り着くだろうか?


 私の心配とは裏腹にオオウミガラスは迷いのない足取りで森林の中を進んでいく。


 何か目印でもあるのだろうか?


 オオウミガラスによると森林地方は図書館がある関係で各地方のフレンズがたくさん訪れるため、森林の中に道が出来ているのだそうだ。


 良く目を凝らしてみると、確かに他と比べて草や落ち葉が少なく道のようなものが出来ている。

 あると知らなければ見落としもおかしくはない。

 所謂、獣道と言うものだろうか。


 なるほど、前回も道に迷わずに図書館へ行けたのはそう言う理由があった訳か。

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