第93話 密林の奥地
原型は保たれている。
だが、横転してしまっているためかプロペラの一部が破損しており、ヘリとしての機能が失われていることは一目で理解できた。
そして、蔦状の植物に覆われたその姿は二度と空を飛ばないように拘束されているかのようである。
周囲の様子を見る限りではここはヘリポートではなく、たまたまヘリが降りられるくらいに開けた土地だったのかもしれない。
残念ながらバスの痕跡と思わしきものはない。
どうやら外れのようだ。
では、何故この場所にヘリは着陸したのだろうか?
その疑問に対する答えと思わしき建物が付近にあった。
まるで、風景に溶け込んでしまいそうな……
いや、これは完全に風景に溶けてしまっている。
屋根に降り積もった落ち葉や壁に生えてる苔や蔦が、この建物を自然の一部にしてしまっていた。
私は蔦を千切りドアを開ける。
電源が死んでしまっているのか明かりは付かない。
ライトで照らして中を確認すると、小屋の中は何処かの事務所のような様相になっており、机の上にはパソコンが置いてある。
どうにか電源を……
そう思ったときにあることに気が付いた。
そう言えば屋根に木の葉が降り積もっていたなと……
屋根に降り積もった木の葉を全て払い落としてから数十分後、小屋の中の電源が復活した。
このジャパリパークではほとんどの電気がソーラー発電であったことを思い出して、木の葉を取り払ってみたが、どうやらこの行動は正解だったようだ。
私はパソコンを立ち上げる。
精密機器なんてしばらく触れてすらいなかったので、久々に文明的な物に触ったような気がした。
幸いと言うべきか不用心と言うべきか……
パソコンの縁にログインパスワードが書かれている付箋があったので、すんなりログインすることが出来た。
初めて見るパソコンにオオウミガラスとコンゴウインコは興味津々で私にくっ付きながらパソコンの画面を覗き込んでいる。
その後ろに椅子に座って少し離れて私達の様子をトラが眺めている。
彼女は群れるのが苦手らしい。
ジャパリパーク内のサーバーが機能していない為か、社内のネットワークに接続することは出来ないが、パソコンの中のファイルを確認すると、どうやらこの施設はこの地方の生態系を監視する為の物らしい。
日付は古いがこの地方に住む動物の生息数や怪我をした動物の報告等を行っていたようである。
その報告を行う先はメールの宛先を見るとこのエリアの管理センターに送られていたらしい。
まだ、私は発見してないが、どうやらそこがこのエリアの中心となる施設のようだ。
各地方毎に設置された生態観察施設にそれを統括する管理センターか。
仮にも動物園に分類されるのだからこう言う施設があってもおかしくはない。
今までの事を考えると、どうやら私は今まで行った全ての地方でこの施設を見逃していたらしい。
もう少しじっくり探索するべきだっただろうか?
しかし、私の目的はあくまでバスの発見と船の燃料補給だ。
さて、ジャングル地方の探索はここで切り上げてそのまま図書館を経由してサバンナ地方へ向かうとしよう。
と、思ったが今日はここまでにしよう。
何故なら外がバケツを引っくり返したかのような豪雨が降っているからである。
色々と浅い知識しか持たない私でもこの現象には心当たりがあった。
所謂、スコールと呼ばれるものだ。
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