第92話 手当

 この地下道は何に使われていたのか?


 既に明かりが消えてしまって無限に続いてると錯覚してしまうような暗闇に目を向ける。

 暗く長い通路を見るとどうしてもかつてのセルリアン迷宮が脳裏にちらつく。

 あれはかなりの特殊ケースだとは分かっていても、洞窟の暗闇を見てしまうと思わず足が竦んでしまう。


 調べてみたいのは山々なのだが、天井から少しずつ破片が落ちてきており、まだ崩落の危険があるので早々に立ち去るべきだろう。

 それにどうにも洞窟内の空気が淀んでいるように感じる。

 これは長い間空気の循環がなかったのかもしれない。

 そうなるとこの地下道の出入口は何らかの理由で塞がっている可能性もある。

 このまま奥に進めば酸欠の危険も考えられる。



 幸いにも地下道へ落下してしまったが、上には飛べるフレンズがいる。


 私達はコンゴウインコに引き上げてもらい、無事に謎の地下道から脱出することが出来た。

 いや、完全に無事と言うわけではなかった。


 地下道から上がってからトラの様子がおかしい。

 どう見ても片足を引き摺っているように見える。

 先程の崩落の際に足を怪我したのか?


 怪我の様子を見ようとトラに近付くと案の定と言うべきか威嚇されてしまったが、私はそんなものをお構い無しに近付く。


 こちらとしては助けてもらった恩があるのだ。


 つべこべ言わず見せてみろ!!



 少し凄んだら何故かトラは従順になってしまった。

 オオウミガラスがやっぱ怒ると怖いよねーとか言ってる。

 一度、話し合った方が良いだろうか?


 トラはどうやら足が地面に埋まった際に痛めてしまったらしい。

 外からでは分からなかったが、あの時にかなりの圧力がトラの足に掛かっていたようで、結果的に足首を挫いてしまったようだ。


 フレンズ達は外見に似合わず人並み外れた耐久力を持っている。

 そのフレンズが怪我をしてしまったと言うのだから、もしも私がトラの代わりに足を踏み外していたら足が千切れてしまっていてもおかしくはなかった。


 それとトラの足を治療する際に困ったことが一つあった。

 靴やソックスがまるで肌に張り付いているかのように脱げなかったのだ。


 その後、オオウミガラスがそれは取れると実践を交えて教えると、先程までのが嘘のように簡単に脱がすことが出来た。


 どうやら取れると知らなければフレンズの服は脱ぐことが出来ないらしい。


 フレンズ化した瞬間から身に付けている衣服なので、何かしら特殊なものになっているのだろう。


 トラの足首に湿布を張り、きつく包帯を巻き付ける。


 軽い怪我なので激しく動かさなければ、これで問題はないだろう。


 手当てを受けたトラは立ち上がって、足の具合を確かめるように動かす。

 先程よりはマシになったとは言え、まだ少し痛むようでしかめっ面をしている。

 辛いなら背負おうかと提案したが、トラは全力でその提案を拒否した。


 地下道の伸びてる方向を避けて、私達は再びヘリを目指して突き進んだ。


 そして、遂に私達はヘリを発見した。

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