第90話 尋ね人

 ところで……


 私はそう言いながら背後にいる彼女へ問い掛ける。


 何処まで付いてくるつもりなんだ?


 さっきからオオウミガラスとずっとお喋りをしていたコンゴウインコが、頭に疑問符を付けて首を傾げた。

 何故付いてくるのがさも当たり前な事であるかのような反応をしているのだろう?



 次に出会ったのはヒュンヒュンと風切り音を響かせながらムチを振るうフレンズ。

 服の特徴などから一目見て彼女が爬虫類のフレンズであることを察することが出来た。

 彼女の名前はアフリカニシキヘビ。

 姉御肌な彼女にヘリの存在を聞いたとき、始めて有力そうな情報を手に入れる事ができた。


 どうやら、この先にいるフレンズがヘリの在りかを知っているかも知れないとの事。

 この情報は非常にありがたい。

 ただ、アフリカニシキヘビ曰く、可愛い顔をしてるからって迂闊に近付くと怪我をするよとの事だ。

 そういう事はやたら各地でふらふらと交遊関係を広げるキングペンギンに言って欲しい。


 ところで、何故さっきからムチを振り回しているんだ?

 そうアフリカニシキヘビに問い掛けると、最近セルリアンの群れがジャングル地方で目撃されたらしく、それを迎撃するために気合いを入れているようだ。


 セルリアンの群れか……


 そう言えば港に現れたセルリアンの大群が向かった先にはジャングル地方があったか。

 この二つの件は何かしら関係があるかもしれない。


 さて、アフリカニシキヘビに言われて、件のヘリの場所を知っているかもしれないフレンズのところへやって来た。

 昼の時間帯は大体寝ている夜行性のフレンズのようで、今の時間帯は寝ていることが多いらしい。


 少し探してみると茂みの中に身体を丸くして寝ているフレンズを見付けた。

 アフリカニシキヘビから聞いていた特徴と一致する。

 どうやら、この寝ている彼女が件のフレンズのようだ。


 彼女の名前はトラ。

 ネコ科の中ではライオンに並んで有名な動物だ。


 さて、気持ち良く寝ているところを起こすのは少々忍びない。

 なるべく優しく起こすことにしよう。


 起こすために近付こうとすると、オオウミガラスとコンゴウインコが私の手を掴んで阻止する。

 どうやら先程の近付いたら怪我をすると言う言葉をそのままの意味で受け取ったらしい。


 そんな物理的に怪我をする要素なんて何処にもないだろうに……

 それに私には初対面のトラに対する下心など欠片もないのだから、別の意味でも怪我をする要素もない。


 私は何とか二人を振りほどいて寝ているトラの近くへ来る。


 確かに可愛いと言われれば可愛い寝顔をしている。

 私は彼女の肩に手を置いて優しく揺さぶりながら声を掛けた。


 すると、彼女は目を覚まして寝惚けたような薄目で私の方を見る。

 そして、私を認識して目をぱっちりと開くとそのまま羞恥と驚愕が入り交じったような表情へと代わり、咆哮のような絶叫を上げた。


 アタシに近付よるなぁああああああああ!!


 トラの右腕が霞んで見えるくらいの速度で動き、私の首筋目掛けて攻撃を仕掛けてきた。

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