日記外その17 胎動とイッカク
そこはジャパリパークの海の底……
様々な海のフレンズが暮らしており、陸上とは一風変わった様相を見せる水の世界。
そして、そんな海の中でも一風変わった場所がある。
辛うじて日の光が届くその場所はとあるフレンズ達により神聖な場所として立入を禁止されている。
最も立入を禁止するまでもなく、ここを訪れるフレンズはほぼ皆無に等しいが……
海底の亀裂より黒い粒子が溢れると、海水と混じり合って虹色の粒子へと姿を変える。
見るヒトが見ればその場所にぴったりな言葉を残しただろう。
そこはヒトからは海底火山と呼ばれていた場所だった。
「……」
そんな光景を適正な距離から観察するフレンズの影があった。
それは牙を模した槍を持つイッカクのフレンズ。
彼女はイルカやクジラの仲間の持つ半球睡眠を駆使して、ほぼ一日中その場所を見張っていた。
侵入者を見張る為ではなく、その場所を見張るために。
「お寿司食べたい……」
……見張っているのだろうか?
「イッカクー!!交代に来たよ!!」
そこへ元気が取り柄のバンドウイルカのドルカがイッカクと交代するためにやってきた。
「わっ!また出てる!もー!これがなければリウキウエリアに行けたのに!」
本来なら彼女達は全員でリウキウエリアへ向かう筈だったが、最近になってこの亀裂から粒子が活発に吹き出すようになり、様子を見るために留守番となってしまったのだ。
「でも、行ったら、お寿司食べられなかった」
「む!確かに!あれおいしかったよね!今度は母さん達連れてみんなで食べよ!!」
「既に予約、完了」
イッカクは親指を上げて既に約束を取り付けていることをアピールする。
ちなみに水中で会話が出来るのはイルカやクジラの仲間のフレンズ達だけである。
「さすがイッカク!!おっとー?」
その時、不意に海中全体に響き渡るかのような振動が巻き起こる。
それは数秒ほど断続的に続いた後に何事もなかったかのようにピタリと止まってしまう。
「不気味……」
「だよね!まるで鳴き声みたい!」
地震でもない海中だけを震わす謎の振動がここ最近増えてきている。
それはまるで何かの鳴き声のようで、海のフレンズ達はそれに怯えてここら一帯にはほとんど寄り付かない。
「ドルカ、母さん達、呼び戻して」
「イッカク?」
「嫌な……予感がする」
「……オッケー!!だけど、無理しちゃダメだからね!!」
ドルカは母さん達を呼び戻すためにリウキウエリアへ向けて泳ぎ始める。
ドルカを見送ったイッカクはとあるヒトの事を思い浮かべてため息を吐く。
ため息は気泡となり、水面へと昇って行く。
「しばらく、行けない……か。残念」
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