第81話 帰還
帰還までの2日間の道程を思い出せる限りまとめて書こうと思う。
何故、日が飛んでしまったのかと言うと、途中で私がシャーペンを落としてしまい日記を書けなくなってしまっていたからだ。
さて、帰り道何が起きたか。
特に何も起こらなかったとだけ書いておこう。
帰り道は順調で何かトラブルに巻き込まれる事もなかった。
雪の上で寝ていたホッキョクギツネと言うフレンズを踏んづけて怒られた以外は……
ツンドラ地方を抜けた私達は例の竹林で1泊することになる。
セグロジャッカル曰く、前来たとき雰囲気が全く違うと怯えていた。
私とオオウミガラスは特に何とも感じないが、セグロジャッカルはここが同じ場所とは思えないと言う。
私達とセグロジャッカルがツンドラ地方へ足を踏み入れた時期に大きな差はない筈だ。
私とオオウミガラスが鈍いのか、短期間の間に何かが変わってしまったのか。
この竹林はもしかしたら何か秘密を抱えているのかもしれない。
最もジャパリパークは秘密だらけの場所なので、秘密の一つや二つ増えたところで問題はないか。
その夜、セグロジャッカルは突然悲鳴を上げて私に抱き着いてきた。
怖い夢でも見たのか知らないが、万力のように締め上げられるような抱擁は初めてだ。
何でも誰かに耳元で囁かれたらしい。
お化けだお化けだ騒ぐ二人に私は諭してやる。
お化けなんて存在しない。
寝ぼけてたから竹の葉が風で揺れる音が声に聞こえてしまったのだろう。
それに本当に怖いのはセルリアンの方だろうに……
しかし、彼女達にしてみると実際に存在し倒すことの出来るセルリアンよりも、居るかどうかも分からず倒すこともできないお化けの方が余程怖いらしい。
二人を落ち着かせるために効果はあるかどうかは分からないが頭を撫でる。
思い返してみるとセグロジャッカルのケモ耳の感触は中々に良かった。
温もりと毛の柔らかさ、そして撫でる手に合わせて形を変える耳の感触は何とも言えない心地好さだ。
次は尻尾を……
等と邪心を抱いているとセグロジャッカルが不意に私に対して前より雰囲気が柔らかくなったよねと言ってきた。
オオウミガラスもそれに同意するように頷く。
以前の私は常に余裕がなく、少しだけ刺々しい雰囲気を纏っていたとのこと。
そんな事もないと思うのだが……
それにとオオウミガラスさらに付け加える。
前は寝てるときなんかずっと泣いていたからね。
泣いていた?私が?
以前の私は寝ているとき夜な夜な悲しそうな顔で涙を流していたのだと言う。
それも砂漠地方を旅していた時くらいを境にピタリと止まったらしい。
何故、私は泣いていたのだろうか?
悲しい夢を見ていた?
悲しい出来事とは?
答えは出ない。
私は何か忘れてしまっている……?
私は日記帳のページを捲り、何か手掛かりは無いかと探す。
だが、結果としては何も手掛かりらしき物は見付からなかった。
だが、1つだけ気になる文を見付けてしまった。
『投げ出された記憶はない。』
まるで自分に言い聞かせているかのように感じた。
私は何かを忘れてしまっている。
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