第79話 ジャパリゴールド
散々人を期待させて置きながら!と、私は珍しく悪態を吐く。
そこにあったのは確かに燃料だった。
しかし、その燃料は船やバスの燃料ではなく、ストーブの燃料だったのだ。
赤いボディにでかでかと書かれた“灯油”の文字が忌々しく感じる。
後になって冷静に考えれば、旅館内にある倉庫の中に乗り物の燃料を備蓄する理由は無い。
普通ならば車庫等の横にある倉庫に置く筈だ。
私自身の早とちりで精神的な自爆によるダメージを負った私は大人しくオオウミガラスが待つ部屋へと戻る。
その時はもう旅館を探索するような気分ではなかったのだ。
しばらくすると、探索を終えたと思わしきセグロジャッカルが帰って来た。
持ってきたのはマンガ、ジャパリゴールド、ジャパリ温泉流氷の湯(入浴剤)……
休憩室とお土産屋から取ってきたのだろうか。
入浴剤は微かに温泉と同じ匂いがしたから持ってきて、ジャパリゴールドは司書が好きそうだから。
やはりカラスには光り物か……
と、ここで私とセグロジャッカルの間に認識の齟齬があることに気が付いた。
セグロジャッカルはジャパリゴールドの事をジャパリコインと呼んでいたのだ。
私はジャパリコインを取り出し、それはジャパリゴールドでこっちがジャパリコインだと説明する。
セグロジャッカルはジャパリコインを見るのは初めてのようで、珍しいジャパリコインだと目を輝かせていた。
世代交代の間に認識のズレが発生してしまい、今ではジャパリゴールドがジャパリコインと呼ばれるようになってしまったようだ。
ジャパリコインのようなコレクションアイテムとは違い、ジャパリゴールドは以前は通貨として利用されていたので、これを使用すればいくつかの旅館の施設が利用できる筈だ。
部屋で利用できそうなのは、備え付けのテレビくらいか。
もう一般の放送は見れないだろうが、幸いにもHDDに保存された映像の再生機能は生きているようなので、ジャパリゴールドを使用して鑑賞会をしよう。
HDDの中身は流石に動物園とあってドキュメンタリー映画が多い。
ジャパリパークの職員の自作だろうか?
今回選択した映画はジャパリパーク近海の海の中を撮影したもののようで、魚に交じってフレンズが泳いでいる。
オオウミガラスがここら辺じゃ見掛けない子だねと言っているので、別のエリアの海で暮らしているフレンズなのかもしれない。
私の見立てではアザラシではないかと思うのだが、実際に会ってみないことにはわからない。
中々丁寧な解説で勉強になる。
そして、映像の最後に流れたカップうどんのCMはジャパリパークの協賛企業の物だろうか?
キツネのコスプレをした人が踊っているのを見て、セグロジャッカルとオオウミガラスは同時にとあるフレンズのことを思い出したようで、映像を見ながら二人して呟いた。
なんか、アカギツネに似ている。
どうやらセグロジャッカルもアカギツネとは知り合いのようだ。
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