第76話 海岸の旅館
ところで、アデリーペンギンとキングペンギンはアイドルに興味はないか?
アデリーペンギンはみんなの前で歌ったり踊ったりは無理ですと言い、キングペンギンは飽き性だから続かないと返答が来た。
ちなみにキングペンギンは飽き性故に一つの場所に留まっていることが少なく、ここにいること自体が稀なのだそうだ。
現在はコウテイペンギンのアイドル活動を時期を見計らって冷やかし……もとい応援に行く為にアデリーペンギンとしばらくはここにいるつもりのようだ。
さて、若干忘れかけていたがオオウミガラスが案内したかった場所は、何処にあるのだろうか?
オオウミガラスは海岸沿いにある旅館を指差す。
一見すると小さな旅館のように見える。
私達は新たにペンギンのフレンズ達を連れて海岸沿いにある旅館へと向かった。
辺鄙な場所にあるが、こういう旅館は自然の風景を売りにしたものである場合が多い。
旅館の中は以外と綺麗であり、埃は多少積もってはいるが家具の破損とかは少ない。
厳しい環境の地方でなければ第二拠点として利用出来ただろう。
最も現在使用している港の寮の方が道具の調達が容易なので、ここが過ごしやすい環境であったとしても拠点を移るつもりはない。
この旅館はなだらかな地形が多く岩場の少ないツンドラ地方の避難所としても利用されているらしく、天候が荒れる時期になるとツンドラ地方のフレンズ達がここへ集合するのだそうだ。
その際は大広間やロビーで雑魚寝状態らしいが、これからは個室を利用すべきだ。
私はロビーのカウンターにある鍵を手にした。
これを使えば旅館にある個室を利用することが出来る筈だ。
オオウミガラスが私から鍵を受け取って、アデリーペンギンとキングペンギンに鍵の説明をする。
オオウミガラスが数字を模様と言っているが、説明は大体合っているので特に補足はしない。
文字も意味を知らなければただの模様。
文字を知らなくても困らない環境なので、今は模様で良いだろう。
だが、文字を知っているならば書き置きのメモ等を残せることを考えれば、文字を習得した方が良いかもしれない。
特に色んなフレンズが利用する公共施設的なものなら尚更だ。
とは書いたもののフレンズ一人一人に文字を教えるのはとても時間が掛かる。
今更ながら教育機関の大切さを身に染みて理解出来た。
さて、個室に荷物を置いたところでオオウミガラスが案内したがって場所へ行くことにしよう。
タオルと各種石鹸を持って私達5人は旅館の中を移動する。
ここに着いた時点である程度察してはいるが、ここは敢えて黙って置くことにした。
まず、鼻の良いセグロジャッカルが奥から嗅いだことのない変な匂いがすると言い出す。
もしかすると天然物なのかもしれない。
そして、遂に私達はツンドラ地方の最終目的地へと辿り着く。
私は高鳴る期待を胸に少し端が解れている暖簾を潜った。
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