第75話 海面を突き破って
雪原を越えると目の前には流氷の浮かぶ寒々しい海が広がっていた。
隣が砂漠とは考えられない光景である。
だが、思っていたより流氷が小さい。
溶けかけているのだろうか?
そんな事を思いながら海面を見詰めているとオオウミガラスが危ないよと警告をしてきた。
確かにこんな寒冷地の海に落ちたら只では済まないとは思うが、流石に足場のしっかりとした場所で立ち止まっているのに落ちたりはしない。
そう、私の立っている場所は足場がしっかりとしていたのだ。
雪や氷に覆われている中で珍しく岩肌が露出しており、表面は平らで海面ギリギリまで近付けるスポット。
人の私では何が危ないのかさっぱりと分からなかったが、オオウミガラスは何が危ないかをしっかり理解していた。
何が危険なのか問おうと口を開いたのとほぼ同時に背後から水面を割る音が響き渡る。
驚いて背後を振り向くと、水面から飛び出した勢いのままこちらへ迫り来るフレンズと目があった。
お互いに一瞬の思考停止の後、直後に起こるであろう悲劇に顔が引き吊る。
咄嗟に私が取った行動はそのフレンズを受け止めること。
突っ込んできたフレンズを受け止め、勢いに押されて3歩程後退したが何とか耐えた。
どうやら、ここはフレンズ達の上陸ポイントだったらしい。
捕獲されたフレンズがもう一人来ると言ってるので、一旦その場を離れるともう一人海から上がってきた。
最初に私に捕獲されたのがアデリーペンギン、後から上がって来たのがキングペンギン。
当然の如くオオウミガラスの知り合いであり、お互いに久し振りと挨拶をしている。
と、ここでオオウミガラスはキングはともかくコウテイは?と周囲を見渡す。
この二人以外にコウテイペンギンと言うフレンズがここで暮らしていたようだが、姿が見えないことにオオウミガラス疑問を抱いたらしい。
すると、アデリーペンギンとキングペンギンは明後日の方向に向き、二人揃ってコウテイは良い奴だったよと遠い目をする。
まさか……セルリアンに?
と言う訳ではなく、コウテイペンギンはロイヤルペンギンと言うフレンズに連れて行かれたらしい。
何でもペパプを再結成するためにメンバーに選ばれたのだとか。
おお!
既にペパプの再結成が始まっていたとは!
頭の片隅でもしもペンギンのフレンズと出会ったなら然り気無く、ペパプを再結成するように誘導するつもりだったが、これなら私が何かするまでもなくペパプのアイドル活動が見れそうだ。
ところで、ペパプは何処で活動をしているのだろうか?
……キョウシュウエリア
海を隔てた向こう側じゃないか。
こうなれば早急に船の燃料を探しだしてキョウシュウエリアに渡らねばなるまい。
いや、キョウシュウエリアに行くのは日本列島に渡る量を最低限確保しなければならない。
若干目的がズレているのを認識しながらも、どうしてもアイドルが見たい私はしばらくの間葛藤することになるのだった。
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