第74話 夜空に架かる
夜中に目を覚ました。
流石にテントの中は狭いので、誰かが身動ぎすれば自然と起きてしまう。
それよりも、テントの中が少し息苦しい気がする。
換気が必要だ。
私はテントの入り口を開けると、テントの中の淀んだ空気が外の冷たい新鮮な空気と入れ替わる。
ふと、テントの入り口の縁に揺らめくものが見えた。
私はまさかと言う思いを胸にテントの外へと身を乗り出した。
既に使い古された表現ではあるが、私の稚拙な表現力ではこの表現しか思い付かなかった。
夜空に架かる光のカーテン
私の頭上には夜空を覆い尽くすようなオーロラが出現しており、淡い緑色の光を放ちながら風に吹かれているかのように揺らめいていた。
本来、オーロラは高緯度の地域でしか見られない現象だ。
本来ならばこんな場所に現れるような現象ではない。
生まれて初めて見るオーロラに圧倒されながら、私は荷物を漁りカメラを取り出そうとするが、そもそもカメラは壊れてしまい部屋に置いたままだったことを思い出す。
是非とも写真に納めておきたい絶景なのだが、カメラが無いのでどうしようもない。
ショッピングエリアでカメラも調達して置くべきだったか。
夜空に広がるオーロラを見ていると実は巨大なドームの中にいて、空は天井のスクリーンに映し出されたものと言われても信じるかもしれない。
いや、それはそれで非現実的か。
私はテントの中にいる二人を起こす。
セグロジャッカルは夜空に広がるオーロラを見て感嘆の声を上げていたが、オオウミガラスは眠い目を擦り綺麗なオーロラだねと一言だけ言ってテントの中へ戻ってしまった。
……このオーロラはツンドラ地方の観光の目玉と言ってもおかしくない。
やはり、オオウミガラスにフタコブラクダの真似は難しかったか。
ところで、この規模のオーロラならば他の地方からでも見えそうなものだが、セグロジャッカルはオーロラを見るのは初めてなのだろうか?
どうやらオーロラを見るのは初めてらしい。
夜行性で夜に行動することが多いセグロジャッカルでもオーロラを見るのが初めてと言っているので、おそらくは他の地方からではオーロラが見えないのだろう。
これもサンドスターによる現象か。
サンドスターはどれだけ私を驚かせれば気が済むのだろうか?
さて、オーロラも堪能したので、明日に備えてもう一度眠るとしよう。
明日にはオオウミガラスが住んでいたと言うツンドラ地方の海岸へ辿り着ける。
そこにはオオウミガラスが私を連れてきたがっていた何かがある。
寒い地域の海と言えばやはり流氷だろうか?
しかし、オーロラを観光名所として案内しなかったオオウミガラスの事だ。
きっと、流氷は私に見せたかったものとは違うだろう。
最後にテントの中に戻ったセグロジャッカルがボソッと眠れないと呟いていた。
夜行性で夜に寝るのに苦労するフレンズなのに起こしてしまったのは少し申し訳無いことをしてしまったかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます