第73話 雪原の訪問者
現れたのはずんぐりむっくりした姿のネコっぽい灰色のフレンズ。
中々太ましい姿をしているが、これはただの着膨れだろう。
彼女の名はマヌルネコ。
雪原に見慣れないものと見慣れないフレンズ達がいるのを見て近付いてきたようだ。
スープを振る舞ったが、マヌルネコは熱いのが苦手なのか少し冷ましてからスープを飲むことにしたようだ。
その間にマヌルネコが私達は何処から来たのと質問をしてくる。
どうやら、同じツンドラ地方のフレンズであるオオウミガラスとは初対面らしい。
マヌルネコは比較的最近、おそらく私がジャパリパークに漂着した日と同時期くらいにフレンズ化したフレンズのようで、地元のフレンズ達の中でもまだ顔を合わせていない子達がいるようだ。
フレンズになったばかりのフレンズと出会うのは初めてだが、他のフレンズと大きく違うところは見受けられない。
フレンズになった時点である程度の言語知識等を獲得しているのか、会話は至って自然である。
これもサンドスターの力なのだろうか?
案の定と言うべきか、マヌルネコは私が何のフレンズなのか聞いてきた。
それに対して、オオウミガラスとセグロジャッカルが私をフレンズそっくりな不思議な獣とマヌルネコに言っている。
ヒトがフレンズにそっくりなのではなく、フレンズがヒトにそっくりなのだが、ここではヒトよりフレンズの方が多いので、このような表現になってしまうのは仕方無いかもしれない。
そんな不思議なヒトに対してマヌルネコが質問をしてくる。
ヒトって泳げる?
私は泳げるが泳げない人もいる。
空を飛んだりは?
無理。
足は速いの?
ジャパリパークでは遅い方ではないだろうか。
結論として、マヌルネコはヒトに対してビミョーと言う評価を下した。
確かに自然界の中で考えれば特別運動能力が優れている訳でもない。
裸一貫で放り出されれば1週間も生きていられるかどうかも怪しい存在だ。
こうして考えてみれば、私もひ弱な存在なのかもしれない。
……そこの二人、何故私がひ弱と言った瞬間に疑問符を付けて繰り返した?
話してる最中に知ったのだが、フレンズになったら皆が自分の名前を調べに図書館へ向かうわけではないらしい。
大抵の場合はその地方に住む誰かに教えてもらうことになるようだ。
しかし、名前を教えたフレンズが間違えていた場合はどうなるのだろうか?
マヌルネコの場合はいくつか動物の名前を挙げられた中で、一番しっくり来たのがマヌルネコと言う名前だったらしい。
それに対して、オオウミガラスは始めから自分の名前を自覚していたようだ。
この事から考えるとフレンズは自分の名前が分からなくても本能的な部分では覚えており、正解を挙げられることで自覚することが出来るのかもしれない。
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