第69話 雪を纏うもの
ツンドラ地方・針葉樹林地帯
仮にこの場所を名付けるのならこうなるだろう。
雪化粧を施された針葉樹の間を私とオオウミガラスが行く。
前回の旅でフタコブラクダに感化されたのか、オオウミガラスはうろ覚えなガイドでツンドラ地方を案内してくれる。
さすがに何度も練習したであろうフタコブラクダのガイドには敵わないか。
他にも海辺から離れることの少ないオオウミガラスに取って、この辺りが馴染みのない場所であることも関係しているのかもしれない。
針葉樹をしばらく歩いていると、風が吹き抜けたと思った次の瞬間に私の目の前に白い塊が落ちてきた。
針葉樹の葉の上に積もった雪が風に揺られて落下してきたようだ。
あと少し歩くのが速ければ、即席雪だるまになっていただろう。
そして、雪だるまと言う単語に遊びの気配を感じたのかオオウミガラスが食い付いてきた。
雪だるまは雪を転がして作った雪玉を二つ、あるいは三つ乗っけて作る雪像の事だ。
一応、今回は食料に余裕があるか分からないので、遊ぶのは余裕が出来てからにしよう。
それに、現在積もってる雪はサラサラしていて、雪だるまやかまくらを作るのには適していない。
故郷で降る雪は湿っぽくて握ると簡単に固まった。
故郷の降雪量は少なく積もっても精々5センチ程度なので、ツンドラ地方のように膝のところまで積もった雪の上を歩く経験は始めてだ。
サラサラしているからまだ歩きやすいが、これが湿った雪だった場合は非常に苦労しただろう。
しばらくオオウミガラスに案内されながら道を歩いていると、私の耳に微かに助けてと言う声が聞こえてきた。
疲れているのだろうか?
と、思っていたがオオウミガラスにも助けを求める呼び声が聞こえているようなので、どうやらこれは私の気のせいではないようだ。
しかも、何処かで聞いた覚えがあるような気がする。
声がする方向へ歩いていくと、何やら私達の前に即席雪だるまの成り損ないのような雪の山が現れた。
きっと木の上から降ってきた雪に押し潰されてしまったのだろう。
もう、途切れ途切れになっているが、どうやらこの下から聞こえてくるようだ。
私達は急いで雪山を手で掘り進めて行くと、中から見覚えのある顔が出てきた。
セグロジャッカルだ。
何故こんな場所にいるのか色々聞きたいところだが、寒さのあまりに意識が朦朧としているのか私達を認識出来ないでいる様子。
とりあえず、何処かで身体を暖めないと危ないかもしれない。
オオウミガラスに何処かで寒さを凌げるようなところはないかと聞いてみる。
オオウミガラスはなんかあったかなーと少し悩んだ後に、神妙な顔付きになって一つだけあったと言う。
いつもと違うオオウミガラスの態度に疑問を感じながらも、私はセグロジャッカルを担いでオオウミガラスの後を付いて行く。
見えてきたのは針葉樹林の中にひっそりと佇む大きめの建物。
とりあえず、寒さを凌ぐには問題はなさそうだ。
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