第68話 風評被害

 とりあえず、二人だけで納得するのはやめてもらえないだろうか。

 と、言う訳で何の努力が実ったかを聞いてみることにした。


 話を聞くところによると、トナカイは風評被害とやらにあっているらしい。

 その風評の中身と言うのはトナカイに出会うと全身が凍り付いてしまうと言う何処ぞのモンスターのような話が広まってしまっているらしい。


 なので、トナカイと知っても逃げ出さなかった私の好感度が上がってしまったのだろう。


 一昨日、ここを通り掛かったフレンズがトナカイを見て凍り付けにされると、話も聞かずに一目散に逃げていった事も私への好感度上昇の原因の一つかもしれない。


 そんな風評被害を払拭するためにトナカイは日夜ツンドラ地方の門番として、フレンズへ警告と誤解を解くために頑張っているそうだ。


 しかし、私はジャパリパークの外から来た存在であるので、そもそもそんな話を知らなかったのだが、とても喜んでいるトナカイに対して残酷な真実を告げる勇気は出なかった。


 では、何故トナカイに会うと凍り付く何て言う話が広まってしまったのだろうか?

 ここは冷静に分析してみよう。


 まずは凍り付いてしまうと言う話はここがツンドラ地方だから広まってしまったのだろう。

 特に寒さに適応出来ないフレンズに取っては、ここへ入ってきた瞬間に身も凍るような寒さを感じて凍り付いてしまうと思ったのだろう。

 事実、防寒しなければ凍死する可能性がある気温だ。

 そして、そんなツンドラ地方で最初に出会うことになるのは間違いなくトナカイとなる。

 ツンドラ地方をよく知らないフレンズが身も凍る寒さに襲われているときに出会えば、トナカイが寒さの原因と思っても仕方がないのかもしれない。


 そして、そんな寒いツンドラ地方でトナカイと出会ったフレンズは思ってしまったのだろう。


 凍り付けにされると……


 門番をすることは実は風評被害を払拭する処か逆に風評被害の原因なっているかもしれない。


 その事に思い至った私はトナカイに門番をすることが、逆に風評被害の拡大に繋がっているのではないかと伝える。


 案の定、凄まじいショックを受けたトナカイは暫し呆然とした後に膝から崩れ落ちた。

 が、何かを思い出したのか直ぐに気を取り直して立ち上がった。


 そもそも、ツンドラ地方の門番はトナカイが風評被害を払拭するために始めたことであるため、門番になる以前からその風評被害が存在していたようだ。


 そうなると私も何が原因かは分からない。


 だが、トナカイは私の話を聞いて何か思い付いたのか、風評被害を払拭するための旅に出ると言い出した。


 いや、待ってほしい。


 トナカイが居なくなったらツンドラ地方の門番はどうなるんだ?


 それに対してトナカイはこう述べた。


 大丈夫、大体のフレンズは入ってきた瞬間寒さに身の危険を感じて、トンネルに引き返すから。


 ああ、成る程。


 フレンズは元々動物なので、身の危険を感じれば素直に本能に従って退却するのだろう。


 トナカイが門番をしていたのは、風評被害を払拭するためであり、本来は門番をやる必要なんて無かったのだ。


 こうして、トナカイは己の風評被害を払拭するための旅に出た。


 無事、トナカイの風評被害が無くなることを祈ろう。

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