第67話 門番
竹林で一晩を過ごした私達は再びツンドラ地方へ向けて移動を開始した。
昨日の事を冷静に思い返してみると、誰かが神社へ誘導したのでは無いかと想えてくる。
私にだけ聞こえた誰かの声、オオウミガラスだけが見た誰かの手……
誰かのイタズラだとしても何のために?
クーちゃんの件を考えれば、単に驚かせたいだけだった可能性も考えられるが、姿は愚か気配すら感じられない。
隠密能力に秀でたやり手のフレンズのようだ。
だが、本当にフレンズなのだろうか?
意図が分からない不気味さを感じながらも、私達はツンドラ地方へ向けて移動する。
しばらくするとツンドラ地方との境に位置するトンネルへとやってきた。
ここを潜れば肌を突き刺すような寒さが私を襲うことになるだろう。
私は荷物の一部を下ろして中から防寒具を引っ張り出した。
氷点下を上回る事の少ない地域を旅するのだから、備えて置いて損はない。
着替え終わったオオウミガラスは私を見て、凄くモコモコでツンドラ地方に住んでそうと感想を漏らした。
寒そうな地方に住んでるフレンズは防寒具のような見た目に近付くようで、今の私は寒いところに暮らすフレンズのような見た目になっているらしい。
寒い地方に住む割には、オオウミガラスの服装は見た目的に少々寒そうだが……
トンネルを潜り抜けると、空気がガラリと変化して急激に気温が低下するのを感じる。
トンネルの外は雪の降り積もった針葉樹の森林。
私は極寒の大地へ足を踏み入れた。
待たれよ。
私達の行く手を阻むように私達の前に槍が突き出された。
槍は角を模したような形状をしており、その槍を構えているフレンズ頭に生えている角のような髪を見て、そのフレンズが何のフレンズであるかを悟る。
トナカイだ。
そんなトナカイを見てオオウミガラスがトナカイちゃん、こんなところで何をしているの?と問い掛けた。
オオウミガラスはツンドラ地方出身とあって現地のフレンズとはそこそこ交流があるらしい。
しかし、有名な獣なのでトナカイであるのは私にも直ぐに分かったのだが、何故かトナカイの瞳が赤と緑のオッドアイになっている。
トナカイはオッドアイを持つ動物だっただろうか?
オオウミガラスとの話を聞く限り、トナカイはこのトンネルの付近で門番みたいな事をやっているらしい。
確かにツンドラ地方の極寒の環境下では、他の地方のフレンズでは生きることは難しいだろう。
だが、このトンネルを抜ければ寒さのあまり直ぐに引き返すのではないかと思うのだが、稀に好奇心旺盛なフレンズが寒さを無視して奥へ行こうとしてしまうので、トナカイは警告をする門番としてここら辺を縄張りしているそうだ。
とりあえず、お互いに自己紹介を済ませる。
すると、何故かトナカイが遠い目をして、努力は結ばれたとか何とか呟いてちょっとだけ目を潤ませた。
突然の事で私の脳内は疑問符だらけなのだが、トナカイの私に対する好感度は何故か上昇傾向にある。
何故だ?
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