第63話 通貨価値

 レジに来て私は操作盤を眺める。


 使用されていた通貨は日本円のようだ。

 となると、このジャパリパークはかつては日本領土であった可能性が高い。


 まぁ、今更ではあるが施設の大半で日本語が使われていたので、通貨も日本円が使われていたのは極当たり前の事だろう。


 今まで日記ではジャパリパークの場所について全く考察をしていなかったので、この機にジャパリパークの場所について記述する。


 ジャパリパークがかつての日本領土だったと言うことは、ここは日本列島の近くに存在すると言うことだ。

 おそらく、日本列島の太平洋側にある。

 当時の政治的な詳しい事情は分からないが、確か日本海側にある島については近隣の国と相当揉めていたと言う話を聞いたことがあるので、日本海側にある島ではジャパリパークの建設は難しかっただろう。


 ……なるべくなら知りたくない事実だったが、流れ着いてしまったのだから仕方がない。

 ジャパリパークから故郷へ戻るには、まずは日本列島へ向かわねばならない。


 このジャパリパークの船は島々を巡る連絡船であり、長期間の航行には向かないからだ。


 問題は山積みのようだ。


 さて、大きく話が逸れたが通貨については日本円の事だけでは終わらない。

 どうやらジャパリパークでは独自の通貨としてジャパリゴールドとジャパリコインが使われていたようだ。

 ジャパリゴールドは日本円と同じく買い物等に使用されていたようで、当時の価値としては1ドルとほぼ同じくらい。

 そして、ジャパリコインは通貨と言うよりは景品交換用の特殊な物になっている。


 どういう意図で二種類の通貨を使用していたかは不明である。


 今では通貨の代わりとしてジャパリまんが使用されているが、この頃の名残でジャパリまんが通貨となったのだろうか?


 ふと、レジの横に1枚だけジャパリコインが置いてあることに気が付いた。

 昔は相当な価値があったのだろうが、今ではジャパリまん以下の価値しかないと思うと、物悲しくなってくる。

 文明が崩壊してしまえば、通貨はただの紙や石になってしまうと言うことか。

 逆に崩壊した文明の遺産と言うことで歴史的な価値が付く可能性はあるが、私が生きている内に価値が上がるかどうかは皆目検討も付かない。

 それにジャパリパークの知名度がほぼゼロに等しいのもあるので、価値が付くことは無いかもしれない。


 私は意味もなくジャパリコインを指で弾き上げて、空中でキャッチする。


 それを見ていたオオウミガラスがなんかカッコいいから自分もやりたいと言ってきたので、オオウミガラスにコイン弾きのやり方を教える。


 その結果、ジャパリコインはオオウミガラスの手から滑り落ちて、回転もせずに床に落下するだけとなった。


 始めの内はそんなものだ。

 練習をすればその内上手くなる。



 さて、長い時間店の中に居たが、もうここでやることはないだろう。

 私は纏めた荷物を持って店を出た。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る