日記外その15 来客とカラス
「おや?珍しいですね」
DVDの映像の解析をしていたハシブトガラスは珍しい来客に目を丸くした。
「久し振り!今回はコイちゃんの方からやって来たよ!」
やって来たのは普段は湿原に暮らしている人面魚のフレンズのコイちゃんだった。
滅多な事では湿原から出てこないのだが、今回は何故か人面魚の方から図書館へやって来たのだった。
人面魚は少しぐるりと図書館の中を見てポツリと漏らす。
「……ヒトが来たからもしかしてって思ったけど、復活はしてないかぁ。残念」
「復活?いったい何を言ってるのでございますか?」
「特別なフレンズの一人だよ。現れるなら絶対ハシブトガラスちゃんの側だと思うんだけど……」
「それはヤタガラス様……と言う方の事でしょうか?」
「そうそう」
人面魚は図書館の本を手に取る。
タイトルは人魚姫、子供向けの絵本として書かれた物だ。
「ヒトってすごいよね。面白い物とか役に立つ物をたくさん残してるし……」
人面魚は椅子に座り、絵本のページを捲りながらハシブトガラスへ話し掛ける。
「我々がこうして居られるのも彼らの残してくれた物のおかげでございます」
図書館には数多くの人の遺産が集められている。
中には未だに何に使うものなのか分からない物も存在している。
ハシブトガラスはもう少しあのヒトに図書館に留まってもらい、遺産の使い方を聞くべきだったかとちょっぴり後悔した。
「っとそうだった。ハシブトガラスちゃんはあのヒトと会った?」
「ええ、あのヒトには会いましたよ」
「そっかー。じゃあ、他のヒトに会ったりは?」
「いえ、私の知る限り、このジャパリパークにはあのヒト以外にヒトは居ないようです」
「……そっかー」
人面魚は心のそこから残念そうに呟いた。
「……ところでハシブトちゃんは料理って知ってる?」
「ええ、もちろんでございます」
「実はねー。この前コイちゃん料理を食べたんだよ。肉じゃがだったんだけど、美味しいのなんのって」
人面魚はハシブトガラスに自慢気に料理を食べたことを話す。
普段ならハシブトガラスが料理の話に羨ましそうに涎を滴ながら食い付く筈だったが、今回ばかりは様子が違った。
「フッ……私も料理は食べましたよ」
予想とは全く違う圧倒的な余裕を感じさせる仕草に人面魚は狼狽える。
「い、いつの間に!」
「中々美味でございました」
「まさか、コイちゃんよりも良いものを食べたの!」
料理を食べたことを自慢しあっているが、ハシブトガラスや人面魚が食べた料理よりも高級なマグロ料理を食べたフレンズが6名ほど存在するのを知るのはもう少し先の事である。
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