日記外その14 トランプとアルマジロ
「……ババ抜きのルールを説明しよう」
謎のフレンズは今回で二度目の説明を行う。
「まずは私が全員にトランプを配る。皆、受け取ったら他の人に手札が見えないようにする」
謎のフレンズはトランプを数枚手に持ち、レクチャーをしながら説明を続けていく。
新しい事を教えると言うのは何時も大変な事である。
特に謎のフレンズが説明で躓いたのは10以降の数字の絵柄についてだ。
10までの数字ならマークの数を数えれば良いのだが、それ以降は王族の絵柄とアルファベットになるので、ハートやスペードのジャック等が同じ数字と認識させるのに苦労をした。
そして、ルールを説明し終わったところでゲームが始まる。
まず、謎のフレンズがトランプを切る。
二つに分けた山札を1枚ずつ交互に噛ませていき、両手の中でシュルシュル音を立てながら混ざっていく。
「何それ!なんかカッコいい!」
「……シャッフルの仕方も色々あるんだ」
とは言っても、謎のフレンズが知るトランプのシャッフルの仕方は、スタンダードなヒンズー・シャッフルと手品等で良く見かけるリフル・シャッフルの二つしか知らない。
ちなみにシャッフルの名前も知らない。
トランプを切り終えた謎のフレンズは全員にトランプを配る。
各々、揃った数字を捨てて、残った手札で勝負を開始する。
前回、オオウミガラス、セグロジャッカル、ハシブトガラス、謎のフレンズで行ったババ抜きでは、断トツにオオウミガラスが敗北していた。
今度は負けない。
オオウミガラスはそう意気込んで、フタコブラクダから手札を引いた。
ノーペア。
出だしはあまり良くなかった。
始めはほぼ拮抗していた手札だったが、次第に差が現れ始める。
最初にリーチを掛けたのはヒメアルマジロだった。
手札の枚数は2枚。
ペアが揃えば一位で抜けることが出来る。
「うーん……これにします!」
ヒメアルマジロが謎のフレンズの4枚の手札から1枚引く。
「わーい!やりました!」
「……くっ」
フタコブラクダがヒメアルマジロの手札を引くことで、ヒメアルマジロが一位で抜けた。
残りは3人になる。
「はい、どーぞ」
「むむむ……む!うぎゃああああああ!!」
フタコブラクダの手札からトランプを引いたオオウミガラスが悲鳴を上げた。
「オオウミガラスちゃんにジョーカーが行きましたね」
「そそそそんなことないよ!!」
高みの見物モードのヒメアルマジロがジョーカーの行方を実況する。
「……」
ジーっと謎のフレンズはオオウミガラスの表情を見ながらトランプを選んでいく。
謎のフレンズの指がトランプの上を通る度にオオウミガラスはコロコロ表情を変えて行く。
オオウミガラスが圧倒的に負け越している理由。
それは表情の分かりやすさだ。
その点、謎のフレンズはポーカーフェイスを会得しているので、表情から読み取られる事はない。
ちなみにハシブトガラスはトランプを始めて直ぐに表情から手札を読まれていることと、その重要性に気が付いて、謎のフレンズを真似てポーカーフェイスを覚えた。
「ううう……」
謎のフレンズの手がジョーカーの隣にある札に向かう。
「ハックシ!」
「「!!」」
突然のヒメアルマジロのくしゃみ。
ビックリしてオオウミガラスと謎のフレンズが、同時にヒメアルマジロの方へ振り返る。
そして、謎のフレンズが自分の取ったトランプを見て驚愕した。
「なん……だと……」
謎のフレンズが引いてしまったトランプはジョーカー。
ヒメアルマジロがくしゃみをした時に驚いて、オオウミガラスと謎のフレンズの手が僅かに横にズレた。
そのズレが謎のフレンズにジョーカーを引かせたのだ。
「た、偶々偶然だ。ま、まだ勝負は着いていない」
不測の事態による明らかな動揺。
この勝負の行方は如何に……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます