第47話 交通事情

 暑い……

 幾分か予想より気温が低いとは言え、砂漠の昼間はとても暑い。

 オオウミガラスはテントの下でじっと灼熱の時間が過ぎるのを待っている。


 そして、オオウミガラスより暑さに対して耐性のある私は双眼鏡を手に、登り易そうな岩を登り、高い所からから周囲の様子を確認する。


 オアシスの位置や遠くに豆粒程の大きさで見える施設の位置を頼りに現在位置の大まかな場所を特定する。


 悪路と夜の暗闇が思いの外進行の妨げになっていたようで、地図上での進行距離は予定の三分の一である。

 そして、この場所から50メートルもない所から私の良く知る砂だらけの砂漠が広がっている。


 だが、建物の位置を確認出来たのは幸いだ。

 先が見えない旅より、目的地がはっきりしていた方が助かる。


 私はゆっくりと岩を降り、オオウミガラスの待つテントへ向かった。


 テントの下の日陰にはオオウミガラスの他にもう一人フレンズがいた。

 どうやら来客のようだ。


 そのフレンズはおそらく砂漠に暮らしている動物の中って最も有名と言っても過言ではない。

 髪を結った2つのお団子と長い睫毛が特徴的なフレンズだ。

 きっと頭のお団子はコブ代わりなのだろう。

 彼女の名はフタコブラクダ。

 砂漠に住むフレンズだ。


 どうやら見慣れないものがあって、興味を引かれて訪れたらしい。


 砂漠程、厳しい環境に耐えられるなら砂漠地方の外でも活動出来ると思うのだが、どうして砂漠地方のフレンズは他の地方に行かないのだろうか?


 その疑問にフタコブラクダは答えてくれた。


 一つ目に上げられるのが、山岳を越えるトンネルまでの道。

 砂地を歩くのに慣れてても、岩場を歩くのに慣れていない子が多いので、余程の事がない限りトンネルに行こうと思わない。


 二つ目が、砂漠地方の隣にあるツンドラ地方。

 対極的とも言える気候のツンドラ地方は極僅かな期間だけ、雪が溶けるのでその間は通行できるが、吹雪く事が多いので好んで通ろうとは思わない。


 よって、砂漠地方のフレンズは基本的に他の地方のフレンズと交流が少ないのだそうだ。



 夜の闇のせいもあるだろうが、砂漠地方のトンネルへ行く道は、移動時間が3倍になる険しい道だ。

 交通事情の改善は必要だろう。


 しかし、人工施設が存在する以上、バスが通れる程のそこそこ舗装された道が存在する筈なのだが、砂漠地方のフレンズも知らないのは少々引っ掛かる。


 地形が変化して道が消えたのだろうか?


 まぁ、今考えても仕方がないか。


 それより、私達は砂漠にある人が作った施設に行きたいのだが、案内してくれるだろうか?

 そう、フタコブラクダに頼んでみると、彼女は快く案内役を引き受けてくれた。


 砂漠から中々外へは行けないけど、新しい友達は大歓迎だそうだ。


 一先ず、砂漠で何の情報もなく歩き回ると言う事態は避けることが出来たのは幸いだ。


 あと、やる気満々で案内しようとするのは良いのだが、私はともかくオオウミガラスがへばってるので、昼間は避けてくれると有難い。

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