月夜の砂漠

第46話 ナイトツアー

 夜が来た。


 砂漠は寒暖の差が激しく、昼は灼熱の炎のように暑いが、逆に夜は物凄く冷え込む。

 オオウミガラスは眠そうではあるが、見違えたように元気である。


 昔の砂漠の旅は水の消費を避けるために夜に行動し、星を見て方角を確認しながら行っていたと言う。

 しかし、私には星の知識なんてものはほぼ皆無と言っても過言ではない。

 コンパスがなければ北極星すら分からないのは中々に致命的だと思う。


 上を見上げれば星の海が広がっている。

 今宵は月がまだ出ていないので、本当に真っ暗である。

 だが、ペンライトから懐中電灯に変えたので、今まで以上に遠くまで明かりで照らす事が出来る。


 さて、砂漠のナイトツアーに洒落込もうか。


 夜の砂漠を歩きながらオオウミガラスが昼間はあんなに暑かったのに、どうして夜はこんなに涼しいのか聞いてきた。


 これは受け売りだが……

 砂漠の気温差が激しいのは主に水分が大きく関係しているらしい。

 通常の土地では土壌に水分を含んでいるため、昼間に太陽に晒されても気化熱により過剰に温度が上がることがない。

 砂漠はその水分が殆ど無いために太陽によって急速に熱せられ、結果的に気温が上昇する。


 逆に夜になると空気中の水蒸気が保温作用を持っているために気温が維持されるが、砂漠は空気中の水蒸気も極端に少なく保温効果がないため、急激に冷え込むことになるそうだ。


 まぁ、詳しく説明したところで、オオウミガラスに理解されないことは分かってたことだが……


 しばらく、歩き進めているが、夜の暗闇と代わり映えしない景色も手伝って本当に進んでいるのか時々分からなくなる。


 さらに段々と起伏が多くなり、道も歩くのに苦労するようになってきた。


 ここまで来て私は道に違和感を覚える。


 バスで施設まで向かえるようになっている筈なのに、この道はどうにも車両が走るのに適していないように感じられる。


 悪路を走行するのに適した自動車ならともかく、バスのような多くの人を乗せて運ぶ大型自動車にこのような道は向かない。


 もしかすると、私達は別れ道に気付かずに道を進んでしまっているのかもしれない。


 だが、引き返すには少々道を進み過ぎていた。

 戻れば地図上の自分達の位置を見失う可能性もある上に、何処で別れ道があったのか検討も付かない。

 多少の悪路は覚悟して進み続けるしかないだろう。


 しばらく、進んで行くと段々と夜空が白んでいき、太陽が東の空から登ろうとしていることを告げている。


 今回の移動は一旦ここまでにしよう。


 私は荷物から簡易テントを建てるための道具を取り出す。

 オオウミガラスに懐中電灯を持ってもらい、日差しを遮り、風通しが良い構造のテントをオオウミガラスが照らす明かりを頼りに急いで組み立てる。


 下が固い岩盤だったので骨組みを立てて固定するのに苦労したが、何とか日が差す前にテントを組み上げることに成功した。


 砂漠の1日目。

 暑い灼熱の時間がやってくる。

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