日記外その11 深夜とワニ

 ジャパリパークにおいては夜にこそ活発になるフレンズが多くいる。


 港の夜に一人だけ活発になったが故に暇をもて余したフレンズがいた。


「暇過ぎるよ……」


 セグロジャッカルは一人昼間にうっかり寝てしまったことを後悔した。

 深夜に港を徘徊していると二人のフレンズに出会った。


「こんばんはなの」

「こんばんはです」


「あ、ミシシッピーワニと……」

「始めましてオオサンショウウオはオオサンショウウオなの」


 オオサンショウウオの見た目はビキニの上に薄い生地を纏ったような姿をしている。

 そして、尻尾から両生類特有の鱗のない粘膜で覆われた皮膚が確認できる。


「あたしはセグロジャッカル!よろしくね!ところで二人とも湿地のフレンズだよね?どうしてこんなところに?」

「イカダを作り方を教えてくれた方に改めてお礼をしたくてジャパリまんを持ってきたんです」

「面白そうだから付いて来たの」

「そうなんだ。でも、タイミングが悪かったね。夜行性じゃないから夜は起きて無いんだよ」


 現在、セグロジャッカルを除く3人は昼行性なので就寝中である。

 寝ているのに無理に起こすのも悪いのでジャパリまんは謎のフレンズが起きてからセグロジャッカルが渡すことになった。


「あ、そうだ。実はね……面白いこと教えてもらったんだ」

「何なの?」

「じゃーん」


 そう言ってセグロジャッカルが取り出したのは小さな紙の箱だった。


「「……」」


 当然と言うべきか何処が面白いのか全く分からないミシシッピーワニとオオサンショウウオは箱を見て固まった。


「アハハハ……まぁ、最初はそんな反応だよね。でも、これが面白いんだって」


 セグロジャッカルが箱の中から取り出したのは数字と絵が書かれたカードの束、謎のフレンズ曰く『トランプ』と呼ばれる物だ。


「これを使った遊びで『ばばぬき』って言うんだけどね」


 セグロジャッカルは謎のフレンズに教えてもらった遊びをミシシッピーワニとオオサンショウウオに教える。


「同じ数の絵が揃たら捨てて、先に全部手元の『とらんぷ』が無くなったら勝ちなのですね」

「聞いてたら面白そうなの!早くやろうなの!」

「じゃあ、皆に『とらんぷ』を配るね」


 セグロジャッカルは二人にカードを配り始める。


 10分後……


「はぁああああ!!うわあああ!!」


 気合いと共にセグロジャッカルがオオサンショウウオから取ったのはジョーカーのカード。


 その反応からミシシッピーワニはセグロジャッカルにジョーカーが移った事を確信する。


「……」


 セグロジャッカルがミシシッピーワニの前に悪どい笑みを浮かべながら手札を持ってくる。


「……っ」


 この中に一つジョーカーが混じっている。

 ミシシッピーワニは震える指先でセグロジャッカルの手札を選ぶ。


「……け……引け……!」

「ぐぬぬ……」


 絶対に負けられない戦いがここにある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る