かつての残影

第36話 遊園地

 遊園地、そこはかつてフレンズと人の交流の場として作られた施設。


 人とフレンズの笑顔が溢れている光景を幻視してしまいそうなくらいの面影を残しながらも、かつての輝きを徐々に失って行く光景は中々に心に来るものがある。


 さて、遊園地と言えばおそらくあるだろうなと考えていた移動式のお土産屋を見付けた。

 私はそこにある物を一つ取って頭に装着した。


 けも耳カチューシャ、何の動物の耳なのかは知らない。


 セグロジャッカルの頭に装着すると耳が6個存在すると言う訳の分からない状態になる面白アイテムと化した。

 オオウミガラスは翼の付いたカチューシャで翼を増やしている。

 よし、このままどんどん増やしてしまえ。


 済まなかった。


 遊園地に来て思わず童心に帰り、はしゃぎ過ぎて司書からもう少し真面目にやってくださいとお叱りの言葉を受けてしまった。


 とは、言っても私達の装備がどう考えても真面目に探索する装備ではない。


 お昼のお弁当、水筒、敷物、パンフレット、おやつのジャパリまん。

 完全にピクニック装備だ。


 さて、半ば遊び気分が抜けないままに私は司書に連れられて遊園地の開かずの扉の前へ連れて来られた。


 その場所はどちらかと言うと管理センターのようなところで、その中にある関係者以外立入禁止と書かれた扉にはアナログ式の鍵が掛かっている。

 カードキー式ではなかったようだ。


 司書は部屋の扉が開かないことに対して、パークガイドなら開けられる筈と私に無茶振りをしてきた。


 パークガイドの制服ではなく鍵が必要なのだが……

 まぁ、やれることはきっちりやらせてもらう。


 私が取り出したのは2本のヘヤピン。

 こうした犯罪行為に手を染めるようなことはしたくないのだが、仕方あるまい。


 私は2本のヘヤピンをドアノブの鍵穴に突き刺した。



 ヘヤピンでピッキング出来ないかと30分くらい格闘したが、やはり素人には難しい。

 そろそろ諦めようかと思った矢先にカチっと鍵穴が90度回転したではないか。


 ……開いた?


 どちらかと言うとジョークで持ってきた物の筈なのに、いざ本当に出来たとなると思わず硬直してしまう。


 司書なんてさすがパークガイドでございますね!と勘違いを加速させてるし、オオウミガラスはただただ感心の言葉を漏らす。

 一応、これはパークガイドの制服だからではなく、偶然に開いた物だと言うことを強く言い聞かせた。


 ……帰ったら寮の管理人部屋でピッキング出来るかどうか試してみよう。


 ガイドじゃなくて怪盗になってしまった私はそろりと慎重にドアを開けた。


 部屋の中は窓もなく真っ暗で、入口の近くにあった点灯スイッチを押して部屋の中を明るくする。


 どうやらここは遊園地の監視室のようで、中には沢山のモニターが存在していた。

 こう言う部屋はある程度大きな施設には当たり前のように存在している。


 そして部屋の中には監視カメラの記録として残されたDVDがあった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る