第34話 寛ぎの間

 降り頻る雨の中、午前中にやることが無くなってしまった私達は共用スペースのソファーに座りながら寛いでいた。


 セグロジャッカルなんか真っ昼間だと言うのに身体を丸めてソファーの上で爆睡中である。

 元々セグロジャッカルは夜行性の獣のようで、普段は昼間に寝ているらしい。


 司書は共用スペースに置いてあった雑誌を読んでいる。

 タイトルは『ジャパリ日和』

 どうやら社内報的な物なのか中には『今月のフレンズ』と題して新しくフレンズになった子を紹介しているページがある。


 その中に見覚えのある顔があった。


 セグロジャッカルだ。


 司書に聞いてみるとここに写ってるのはソファーで寝ているセグロジャッカルではなく、別の子のようだ。

 良く見ると同じ様でありながら本の少しだけ服の細部が違っている。

 特に服の縞模様のパターンの違いが分かりやすい。


 司書曰く、基本的に同じ種類のフレンズは極希にしか生まれないらしい。

 なので、同じ種類の別の子は前任者を指す。

 そして、大抵の場合においてフレンズ化すると前任者とそっくりな容姿になるようだ。


 無論、コヨーテのように丸っきり変わる例外もある。


 以前考察したフレンズが世代交代によってほぼ入れ替わっていると言う説は当たりのようだ。


 そして、その事件はフレンズ達の間で例の異変と呼ばれている。

 司書が知る限りではフレンズの大規模な世代交代が起こったのは二回。

 例の異変以前の記録はほぼ残っていないらしい。


 おそらく、一回目はパークの外への体裁を気にしたのか、何かしら秘密にしなければならないことが多かったのか、意図的に情報が隠された可能性も否定できない。


 司書曰く、一回目の異変は女王事件と呼ばれているそうな。

 異変の内容はほぼ伝聞なので実際に本当にあったかどうかは確証が得られていないが、おそらく事実であるとのこと。


 ところで、話は変わるが司書は同じ種類のフレンズを見たことがあるのかと問い掛けると、司書自身は見たことがないと言う。

 どうやら、これも別のフレンズから聞いた話で司書は確かめていないようだ。


 ……同じ種類で思い出したが私がこのジャパリパークに来てからずっとゴリラのフレンズと勘違いされる事が多かった。

 もしや、ゴリラのフレンズは私にそっくりな見た目なのだろうか?

 始めは動物のゴリラの方を思い浮かべてイライラしたが、フレンズとなればきっと人に近い姿の筈だ。

 特に霊長類ともなれば中には人の見分けの付かない


『ジャパリ日和』を捲る……捲る……


 ゴリラのフレンズは見付からなかった。


『ジャパリ日和』が発行されている間にゴリラのフレンズが産まれなかったと言うことなのだろう。

 もしくはここにある分より前の『ジャパリ日和』にはあったのかも知れない。

 こうなったら意地でも探し出す。

 一目見ておかないとこの胸の内に広がるモヤモヤが晴れない。


 バス探しのついでにゴリラのフレンズも探してみることにする。

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