第33話 コスプレ
やってきたのは寮の倉庫。
幸いにも鍵は掛かっていない。
この前の探索で寮の管理人の部屋と思わしきところは発見しているのだが、鍵が掛かっていて入れない。
もしも、そこに入ることが出来るならば、マスターキーを入手して全部屋を探索するとこが出来るようになるだろう。
倉庫の中を探索すると様々な種類の予備の制服が納められていた。
制服と言ってもむしろ探検家のような見た目の物もあり、服の機能もほぼ見た目通りと見て良さそうだ。
何か一悶着あるかと思ったが思いの外あっさりと目的の物を発見できた。
早速とばかりに司書にパークガイドの制服を手渡される。
サイズは特に問題はなさそうだ。
早速パークガイドの制服を身に付けると司書とセグロジャッカルは目的達成とばかりに大はしゃぎ。
そして、私の隣にしれっと飼育員の制服を身に付けたオオウミガラスがドヤ顔で立って司書とセグロジャッカルの声が驚きを含んだ物へと変わった。
そう言えば倉庫に入ってからオオウミガラスの姿が見えなくなったが、何処へ行ったのかと思ったら飼育員の服に着替えていたらしい。
飼育される側が飼育する側の服を着ると言うあべこべな状態。
もしも私がフレンズの服を着ていたのならばとっても皮肉的な光景になっていただろう。
早速司書とセグロジャッカルの興味の対象は私からオオウミガラスへと完全に移行してしまっており、私はオオウミガラスが自慢気に服が脱げることを吹聴している様子を少し離れて眺める。
そう言えば最初に見たときも衝撃的だったが、頭の上のケモ耳と側頭部に付いてる人間の耳はどちらが本物なのだろうか?
触りたい。
触って確かめてみたい!
そんな邪心を抱いていると私から不穏な気配を感じたのか、私の方を振り返ったセグロジャッカルが少し距離を取った。
野生の勘は侮れない。
どうやら、服を脱げると言うことは司書も知らなかったらしい。
何でも人だけがそう言う特性を持っているものだとばかり思っていたようで、まさかフレンズも服を脱げるとは思ってなかったようだ。
私としてもフレンズの服は毛皮の延長戦にあるもので、脱げるとは全く思っていなかったので風呂場でオオウミガラスが脱いだときは驚いたものだ。
先入観と言うものは恐ろしい。
そして、新しい発見があった場合は早速試してみたくなるもので、すぐに着せ替え大会が始まった。
フレンズからすると人の服装こそがコスプレになるのだろうかと、くだらない疑問を頭の片隅で考えながらオオウミガラス達の衣装チェンジを見守る。
何度も各々が思い思いに服を取っ替え引っ替えした挙げ句最後に辿り着いたのは……
元の服装だった。
やはりこれが一番着心地が良いらしい。
まぁ、人の服には尻尾を通す穴がないから仕方無いか。
と、考えたのだがそう言えば脱いだフレンズの服には尻尾を通す穴が空いてなかったような気がする。
見間違えだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます