雨天の日に

第32話 朝の滴

 本日の天気はしとしとと降り続ける雨。

 遊園地の探索へ出掛ける筈だったが雨が降っているので延期する。


 もしも、これが湿原から港へ辿り着くまでの間に降ったのだとしたらきっと風邪を引くことになっていただろう。

 そう考えると拠点を構えてから雨が降り出したのはある意味幸運だった。


 こういう雨の降る日は部屋でゆっくり寛ぐに限る。

 雨音を聞き、コーヒーを飲みながら優雅に読書をして過ごすのだ。


 だが、計画と言うものは得てして破綻するものらしい。


 早朝から雨に濡れた刺客が私の朝食を狙ってとやってきた。

 だが、人は学習する生き物である。

 私は事前に朝食の材料を多目に頼んでいたのだ。


 ……何故、セグロジャッカルと司書がセットでここにいるのだろうか?

 開口一番に料理食べたいと言っていたので料理が目的なのは分かるが……


 司書は流石図書館暮らしをしているだけあって料理は食器を使うものだと認識していたようだが、初めて扱うのかスプーンの持ち方がかなりぎこちない。


 司書ならば上手に使えるのではないかと思っていたのだが、初体験では流石に上手くはないらしい。


 そうなると、箸を自在に使いこなしていたコイちゃんは何者なのだろうか?


 朝食を食べ終えとても満足そうな表情を浮かべて司書はほうっと溜め息を吐いた。


 お粗末様でした。


 では、本題に入ろうか。


 司書達が何をしにここへ来たのか聞いてみると、料理を食べることの他に私に手伝ってもらいたいことがあるとのこと。


 パークガイドの制服が一式揃ったら私にそれを着てもらいたいらしい。

 それくらいなら別に良いが、パークガイドの制服では開かずの扉は開かないと思う。


 それで、何処を探すのか聞いてみると司書はスタッフ寮を探すと返答が返ってきた。


 丁度、スタッフ寮にいることだし手伝おう。


 ここがスタッフ寮であることを聞くと司書は面食らったような顔をして辺りを見回し始めた。

 どうやらここがスタッフ寮であることは知らなかったらしい。


 パークの職員。

 その一言で括られてしまうかもしれないが、この巨大な複合レジャー施設でもあるジャパリパークには様々なスタッフが居たであろうことが考えられる。


 パークガイド

 その名の通りジャパリパークを案内するスタッフ。

 広大なジャパリパークを客を連れて案内するのはきっと大変だっただろう。

 特に気候の変化が激しいのでルートを考えるのも苦労する。


 飼育員

 本来ならば動物を飼育するのが仕事の筈なのだが、このジャパリパークに置いては少しだけ違う役割を持っていたようだ。

 動物のフレンズ化と言う現象もあってか人との関わり方を教える家庭教師のような面もある。

 私の過ごしている部屋がかつての飼育員の部屋だったようで、部屋に置いてある物から推測した話であるがおそらく合っていると思う。


 その他にもサンドスターや動物を研究する研究員、売店等で働く販売員、事務会計など例を挙げるとなると切りがない。

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