第31話 明日に向けて

 結局、イッカクは何のために港へやって来たのだろうか?

 そこには特に意味なんてなく、ただの散歩だったと言う落ちも十分に考えられる。


 イッカクが海に帰るのを見送った私達は本格的にバス探しの目標を立てることにした。


 候補は島中に存在するが、この港から直近の人工物がある場所はここからそう遠くない位置にある遊園地になる。

 遊園地と言ってもそこまで大きくはない小規模な物だ。


 廃墟の遊園地。

 きっとそこは本来ならば人とフレンズの交流の場となる筈だった場所だ。


 遊園地を探索するのに怖いのが各種アトラクションのメンテナンスが一切行われていないであろう事くらいか。

 特に落下の危険がある観覧車やジェットコースターには怖くて近寄る気にはなれない。


 そう言えば地図を見るとセグロジャッカルが向かった先が遊園地になっている。

 もしかして、セグロジャッカルは遊園地でパークガイドの制服を探しているのだろうか?

 制服を探すならこちらの港の方が見付かると思うのだが……


 もしも、遊園地でセグロジャッカルと出会うようならこちらで探すように言ってみるべきだろうか。


 明日に備えて荷物を整理していると、足にちょっとした違和感を感じる。


 ここ数日歩き詰めだったのが響いたのか、今更になって太ももに筋肉痛のような痛みが走るようになっていた。

 ゆっくり湯船に浸かってからストレッチを行い筋肉を解すことで何とか筋肉痛を緩和できないか試みる。


 ストレッチを見たオオウミガラスが好奇な視線を送っていたが、私は気にしないことにした。

 フレンズ達も筋肉痛になったりしないのだろうか?


 さて、一通りストレッチを行い私は小さな箱を取り出した。

 無論、昼間のトランプである。

 人類の叡知の詰まった娯楽であるトランプの面白さをパークに広めるための第一歩として、オオウミガラスにトランプの遊び方を伝授しよう。

 ババ抜き、神経衰弱、七並べ、大富豪、スピード、ポーカー……

 何からやりたい?

 そう息巻いていたのだが、気が付くと既にオオウミガラスは夢の中へ旅立ってしまっていた。


 トランプの面白さを伝授するのはまた今度にしよう。


 明日もまた結構歩くことになるので早めに睡眠を取ることにする。


 遊園地と言えばマスコットキャラクターが付き物だが、このジャパリパークの遊園地にはマスコットキャラクターはいるのだろうか?

 フレンズがマスコットキャラクターと言われればそれまでだが、マスコットキャラクターにしては種類が多過ぎる。


 フレンズよりも魅力的なマスコットキャラクター……

 いや、そもそもあそこは人とフレンズの交流の場だ。

 フレンズも客として考えるならフレンズも興味を示すような造形のキャラクターでなければならない。


 きっとパークスタッフも似たような葛藤をしていただろう。


 いい加減筆を置いて寝ることにする。

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