第30話 結果発表

 かつてフレンズ達が知っていた人の文化が消えたのは、忘却ではなく情報の断絶が起きたと考えれば自然だろう。


 祖母はジャパリパークでは度重なるトラブルがあったと言っていた。

 つまり、ジャパリパークから人が撤退するような事態が起きた前後に、ほとんどのフレンズが居なくなったと考えられる。


 フレンズを脅かす存在として考えられるのはセルリアンだが、フレンズを絶滅寸前までに追い詰めるだけの驚異とは考え難い。


 ジャパリパークの過去へ思いを馳せている間に意外と時間が経ったことに気が付いて私は急いで目的の物を探す。


 見付けた!


 私がそれを持って集合場所へ駆け付けると既にオオウミガラスとイッカクは面白い物を見付けていたようで私を待っていた。


 では、早速各々見付けてきた面白い物を発表してもらおう。


 私が最初に発表するのか。

 これでも中々に自信があるので最後に発表をしたかったのだが……


 まぁ、期待には答えてあげようではないか。


 私が取り出したのは小さな紙の箱。

 全世界で知らぬものがいないと確信を持って言える面白い物。

 カードゲームの王様、トランプだ。


 だが、反応はイマイチだった。


 それって面白いの?

 未開の地の住人の言葉の刃が私の胸を抉る。


 面白い物なんだ。

 絶対に面白い物なんだ!

 貴女達は遊び方を知らないだけなんだ!


 私は絶対にトランプの面白さを知らしめてやると言う決意を胸に次の発表者に注目をする。


 オオウミガラスが見つけ出してきたのは『の』の字に似たエムブレムの奇妙なオブジェだった。

 面白い形のオブジェだが果たしてそれは面白い物なのだろうか?

 不本意ながらも面白い形と認めてしまった。

 イッカクからの反応も悪くないので、少なくとも私の持ってきたトランプよりは評価が高くなりそうだ。


 若干納得できない。


 そして最後にイッカクが持ってきたものを見せてきた。

 それは全身真っ白なキツネのぬいぐるみだった。

 形が面白い訳でもない。

 かと言って面白い仕掛けや遊びがある訳でもない。

 それの何処に面白い要素があるのかとオオウミガラスと二人して首を傾げているとイッカクがぼそりと呟いた。


 尾も白い物。


 負けた!!

 確かにそれは紛うことなきおもしろい物だ。

 イッカクの一言を聞いてオオウミガラスと二人して口から感嘆の言葉が漏れてしまった。

 確かにこれならば物自体の面白さと言う個人の感性による評価に左右される事なくおもしろい物として認知することが出来る。


 完敗だ。


 私としたことがまさか知恵比べでフレンズに負けるとは……

 いや、良く考えればフレンズ達は知識がないだけだ。

 知識がないことは知恵がないと言うこととイコールで結ばれることはない。


 イッカク、貴女が一等賞だ。


 そう言われてイッカクは口を半開きにしたままポカーンとした表情を浮かべる。

 何故、一等賞と言われた本人が一番訳の分からなそうな顔をしているのだろうか。

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