第29話 トレジャーハント

 とりあえず、なんかすごーい物だとでも思っていれば良い。

 百聞は一見にしかずとは良く言ったものだ。


 パンフレットを見る限りでは貸し切りで使用するタイプとバス停を回るタイプの二つがあったようだ。

 だが、バス停を巡ったところでバスが見付かるとは思えない。

 祖母の話によればジャパリパークは一度は開園したものの相次ぐトラブルで閉鎖した。

 つまり、バス停が機能した時期は極短い期間であった筈なので、バスの経路にバスがある可能性は低い。


 むしろ、個人的な利用が多かっただろう。


 そうなると各地方に点在する各種施設への移動に使われていた可能性が高い。

 ならば、各地方にある施設を訪ねれば自ずとバスを見つけ出すことが出来るだろう。


 しかし、不思議と港の周辺にはバスは存在しなかった。


 ジャパリパークから撤退するには港からだと思うのだが、何故車両が一つもないのだろうか?


 ところで、イッカクは私に付いてきて楽しいのだろうか?


 楽しいらしい。


 真剣な私に対して二人はお宝探し気分で私に付いて回っているようだ。

 差詰めパンフレットはお宝の地図と言う訳か。


 ……根詰め過ぎなのだろうか?


 オオウミガラスに気楽に行こうよと言われて僅かながらに焦っていたことに気が付いた。


 そうだ。

 時間だけならたっぷりとある。

 何も焦る必要なんてないのだ。


 なのに、何故私は焦っているのだろうか?


 それはきっと近付いたゴールが遠退いた様に感じてしまったが故だろう。

 原因が分かって少しだけ気分がスッキリした。


 せっかくなので息抜きをしよう。

 考えようによってはこのジャパリパークはリゾート地だ。

 ならば、目一杯楽しまなければ損だ。


 と言う訳でこれからはバスの事は抜きにしてお宝探しゲームを始める。


 お題は面白い物

 自分が面白いと思った物を一つだけ持ってきて見せ合うのだ。


 範囲はこの港のショッピングエリアのみ。


 よーいどん!


 開始の合図と共にオオウミガラスとイッカクは思い思いの方向へ散っていった。


 さて、私も何か面白いものを探すとするか。


 私が目を付けたのは来園客用のお土産コーナー。

 そこには3頭身のデフォルメされたフレンズ達のぬいぐるみと元の動物と思われるぬいぐるみが置かれている。


 容姿に見覚えのあるぬいぐるみを手に取ってタブを確認する。


 カリフォルニアラッコ


 懐かしいと言う程でもないが、ジャパリパークに来て二番目に出会ったフレンズだ。

 昔から容姿が変わっていないのかぬいぐるみになってもカリフォルニアラッコと一目で分かった。

 彼女は元気にしているだろうか?


 次に何と無くで手に取ったぬいぐるみのタブを確認する。


 コヨーテ


 昔と比べて何が起きたのか分からないくらいの変化が起きている。

 昔は色白だったのに今ではこんがりと日焼けしたような肌になっているし、そもそも服が制服タイプから私服のようなタイプになっている。

 何が起きたのだろうか?


 世代交代だ。


 ここに来てから疑問に思っていたが、ジャパリパークはかつて人に管理されていた施設の筈なのにほとんどのフレンズが人を知らないのはおかしい。

 つまり、今現在ジャパリパークにいるフレンズ達と過去にジャパリパークにいたフレンズ達は別の個体である可能性が高い。

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