日記外その9 ウミガラスと大浴場

 謎のフレンズは手帳を閉じて椅子から立ち上がった。


「あ、終ったの?いつも書いてるけど楽しい?」

「……楽しいから書いてる訳じゃない。日々の記録は大事だから書いてる。でも、少しは楽しいかも」

「そーなんだ」


 オオウミガラスと雑談しながら謎のフレンズはタオル等をバッグに詰め込んで部屋から出ようとする。


「これから何処に行くの?」

「大浴場」

「あのなんかおんせんっぽい奴ね」

「……あるのか。温泉」

「海岸沿いを行くとね、あるんだよ。今度一緒に行く?」

「……行こう」


 謎のフレンズとオオウミガラスは一緒に大浴場へ向かった。

 大浴場はそこそこ汚れていたが、二人で掃除を行ったのでそれなりに綺麗になっている。


 オオウミガラスは真っ先に脱衣所を抜けて大浴場の方へと向かったが、謎のフレンズは脱衣所で服を脱いで徐に顔を脱いだ服に近付けた。


「……意外と臭わない。結構汗も掻いたと思ったが……」

「ねぇ!早くこっちに来て……」


 来るのが遅い謎のフレンズを呼びに戻ってきたオオウミガラスは服の臭いを嗅いでいる謎のフレンズを見て硬直した。


「あ、いや、その、これは別に臭いを嗅いでいた……けど、それは服の臭いを確かめていただけであり、決して服の臭いを嗅いで妙な気持ちになっていた訳ではない。これはあくまでげん」

「えっ!?それ取れるの!?取って入るの!?もしかしてわたしのも!?」

「……?」


 謎のフレンズが早口で何か言い訳じみた事を言い出す中でオオウミガラスの一声で謎のフレンズの口が止まった。


「あ、なんか取れた!」


 オオウミガラスは試しにと自身の服に手を掛けるとあっさりと脱げてしまった。


「……ぬ、脱げるのか。取れないものだとばかりに……」


 謎のフレンズはフレンズの服は生まれたときから身に付けている毛皮のようなもので、脱げない物だと思い込んでいた。


「全部取れたよ!これ、きっと大発見だよ!」

「……い、意外と知ってるフレンズは多いんじゃないか?そ、それより少しくらい恥じらいを……」

「早く全部取ろうよ」

「じ、自分で脱ぐから!」


 色んな意味でフルオープンなオオウミガラスの姿を見て顔を赤くしながら謎のフレンズは脱がされる前に服を脱いでオオウミガラスと一緒に風呂に入った。


「ああ……気持ちいい……」


久々に浸かる湯船に謎のフレンズの口から溶けたおっさんのようなため息が漏れ出した。

近い内には温泉に行こうと謎のフレンズは心の中で決意を固める。


「ふぇ~気持ち~、全部取って入ると気持ちいいんだね。今度皆にもおしえよーと」

「……お風呂入るとき意外は脱いじゃダメだ」

「どうして?」

「どうしても」


 脱ぐことに恥じらいを持たぬフレンズ達を思い先手で忠告をする謎のフレンズ。


 この事を切っ掛けにオオウミガラスから徐々に服が脱げると言う情報が広がり、このジャパリパークにちょっとした温泉ブームが訪れるのはまだ先の話である。

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